Sui(スイ・
SUI)の開発元Mysten Labs(ミステン・ラボ)の共同創業者兼チーフ暗号学者であるコスタス・クリプトス氏は10日、量子耐性を備えたSui向けハードウェアカードを開発していることを自身のXで明らかにした。
ハードウェアウォレット「Coldcard(コールドカード)」の流出事件に言及したうえで、同様の被害を自分のユーザーには起こさせないと述べている。
目標は1枚10ドル未満、署名1〜2秒
同氏によると、昨年に友人の協力を得て、非公開の場所にある専用工場を借り受けた。量子耐性ウォレットを量産する体制を整えるためだという。
掲げている目標値は2つある。カード1枚あたりの鍵のコストを10ドル(約1,593円)未満に抑えること、そしてNFC経由の量子署名を1〜2秒未満で完了させることだ。貧困層向けには自身が費用を負担する可能性にも触れ、誰もが最高水準の防御を受けるに値すると記した。
投稿に添えられた写真には、キーホルダーに付けられた基板がむき出しのカードが写っている。表面には「SuiCard V0.0.2 (alpha)」の印字とNFCアンテナがあり、別の写真では「SuiCard Vault」というアプリの初期設定画面も公開された。
いずれもアルファ版の試作段階である。
クリプトス氏はMeta(メタ)のリードサイエンティストを経て現職に就いた暗号学者で、Xでは約2万8,000人のフォロワーを持つ。
背景にコールドカードの乱数不具合
今回の投稿の引き金となったのが、7月30日から発生したコールドカードからのビットコイン(
BTC)流出である。
原因は2021年3月公開のファームウェア4.0.1に混入した不具合だった。本来はハードウェアの乱数生成器からシードを生成する設計だったが、設定マクロの判定を誤ったことで、一部の端末がソフトウェアの疑似乱数へ切り替わっていた。
TRM Labsによると、鍵の強度は本来の128ビットから最小で40ビット程度まで低下し、端末に物理的に触れなくても総当たりで割り出せる状態になっていた。
同社の集計では、4波にわたる攻撃で5,200を超えるアドレスから約1,816 BTC(約1億1,600万ドル、約184億8,000万円)が流出した。ただし集計主体によって数字には幅がある。
ファームウェアを更新しても、生成済みのシードは修復されない。
「量子」と「乱数」は別の問題
クリプトス氏は投稿で、量子と乱数の脅威に反応するのではなく、先導すべきだと記した。ただしこの2つは、原因も時間軸も異なる問題である。
コールドカードの件は実装上のミスであり、量子コンピュータとは関係がない。すでに現実に発生し、資金が流出した事案だ。一方、量子コンピュータが楕円曲線暗号を破るリスクは将来の想定であり、現時点で実現していない。
両者を結びつけているのは、鍵の安全性が土台から崩れうるという点だけである。
なお今回の内容は、ミステン・ラボやSui財団の公式発表ではなく、クリプトス氏個人の投稿として公開されたものだ。発売時期や入手方法は示されていない。10ドル未満と1〜2秒未満という数値も、達成済みの仕様ではなく目標として記されている。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=159.3円)


