米下院金融サービス委員会は16日、連邦政府が保有するビットコイン(
BTC)を財務省の準備金として法定化する「米国準備金近代化法案」(H.R.8957)を可決した。報道によれば採決は28対21。採決に先立ち、ブライアン・スティール議員が提出した代替修正案が採択されている。
委員会を通過、ただし道のりは長い
戦略ビットコイン準備金は2025年3月の大統領令で設置されていたが、法律として固定する法案が委員会段階を通過したのは初めてとなる。修正案を出したスティール氏は、デジタル資産・金融技術・AI小委員会の委員長(ウィスコンシン州選出、共和党)である。
法案は5月21日にニック・ベギッチ議員(アラスカ州選出、共和党)が提出し、ジャレッド・ゴールデン議員(メイン州選出、民主党)が民主党側の共同提出者に名を連ねた。
ただし委員会の可決は入口にすぎない。本会議での採決、上院の審議、大統領の署名がいずれも残っている。
20年は動かせない、その後も2年で10%まで
修正案の中核は保有期間の設計にある。財務長官は法律の制定から180日以内に、財務省内へ戦略ビットコイン準備金と、ビットコイン以外を扱うデジタル資産備蓄を設置する。
対象となる「適格ビットコイン」とは、連邦政府が保有し、法律上ほかの用途に充てる必要のないビットコインを指す。刑事・民事の資産没収手続きや民事制裁金の履行として最終的に没収されたものが含まれる。
準備金に預けられたビットコインは、取得方法にかかわらず制定日から20年以上保有しなければならない。期間中は売却、交換、競売、担保設定、その他いかなる目的での処分も認められない。
期間が明けても蛇口が全開になるわけではない。財務長官は期間終了の2年前に、保有を継続するか段階的かつ管理された放出を認めるかについて議会へ勧告を提出する。満了後に勧告できる売却は、2年間で準備金の資産の最大10%までである。
勧告にあたっては、財政赤字への影響、戦略的投資としてのビットコインの長期的な存続可能性、売却が市場に与える影響、保有資産の分散度、米国の財務体質と強靭性の5点を考慮するよう定めている。
抜け道がないわけではない。制定から1年以内に、財務長官は期間満了前に売却しうる条件と、国家安全保障や金融安定を目的とした例外規定に関する立法提言をまとめた研究を議会へ提出する。
実際に売却する場合は規則の制定が前提となり、透明性と市場撹乱の最小化を優先するよう求められる。売却スケジュールの算定方法と、売却する最大数量の決定過程を公開しなければならない。
主な期限は次の通りとなる。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 制定から60日以内 | 各省庁が保有・押収したデジタル資産の会計を財務省へ提出 |
| 制定から180日以内 | 戦略ビットコイン準備金とデジタル資産備蓄を設置/予算中立の取得手法に関する研究を提出 |
| 制定から1年以内 | 期間前売却の条件に関する研究を提出/州の任意参加プログラムを設置 |
| 設置から360日以内 | 準備金の状況に関する初回報告を上下両院の委員会へ提出 |
| 制定から18年後 | 保有継続か放出かの勧告を議会へ提出 |
| 制定から20年後 | 最短で売却が可能になる(2年間で最大10%) |
政府は自らの保有量を把握していない
修正案の第7条は、各連邦機関の長に対し、制定から60日以内に、当該機関が保有・押収またはその管理下に置くすべてのビットコインとデジタル資産の完全な会計を財務長官へ提出するよう求めている。以後も毎年の提出義務が続く。
この条項が必要とされる背景には、政府自身が保有量を正確に把握していないという事情がある。報道によれば、外部の推計は約19万8,000BTCから32万8,372BTCまで開きがあり、どの没収ウォレットを米政府に帰属させるかで数字が変わる。財務省は照合済みの残高を公表していない。
準備金の設置までの間、各機関の保有分は売却も担保設定もできない。例外は国家安全保障上の目的、法律上の要請、裁判所の命令または犯罪被害者への返還に限られる。設置後は30日以内に移管される。
透明性の担保として、第6条が公開の暗号学的証明によるプルーフ・オブ・リザーブ制度の構築を義務づけた。財務長官は年次報告で総保有量、取引、秘密鍵の管理状況を開示し、暗号学的証明の専門知識を持つ独立した第三者監査人を選任して正確性を検証させる。
会計検査院長は、準備金、年次報告、監査のそれぞれについて定期的な監督を行う。
買い増しは研究まで、自己保管の権利も明記
新規の買い増しについては、法案は義務づけていない。財務長官と商務長官が180日以内に、追加取得のリスク、コスト、潜在的な便益を共同で研究し、それが予算中立で実行可能かを検討する。
そのうえで第9条は、新たな借り入れ、資産の担保差し入れ、新税、赤字支出のいずれによる取得も認めないと明記している。研究が検討する取得手法は、デジタル資産備蓄の非ビットコイン資産の売却や交換、没収や制裁金による受領、州や民間、国際的なパートナーとの協力プログラムに限られる。
州の参加も盛り込まれた。財務長官は1年以内に、州が自らのビットコインを準備金内の分別勘定へ任意で預けられるプログラムを設ける。所有権は州が保持し、フォークやエアドロップで生じた資産の権利も州に帰属する。一方で、カストディに内在するリスクは州が全面的に負うことを書面で確認させる。
第10条は、この法律が私人の適法に取得したビットコインやデジタル資産を政府が押収・没収する権限を与えるものではないと定めた。秘密鍵を自己保管できることは、デジタル時代における財政主権、プライバシー、個人の自由の原則にとって根本的なものだという議会の意思も併記している。


