米資産運用大手BlackRock(ブラックロック)は22日、AIの普及が暗号資産(仮想通貨)の需要を生む過小評価された要因になりうるとするレポート「The Machine-Native Economy」を公表した。デジタル資産部門の責任者らがまとめたもので、AIエージェント同士の決済にはステーブルコインが向くとした。一方、イーサリアムなどのネイティブトークンに恩恵が及ぶかは、各ネットワークの設計次第だと留保している。
ステーブルコイン取引額、上半期で8.5兆ドル
レポートは、AIエージェントが1セント未満の少額取引を24時間、高頻度で行うようになると想定する。米国の銀行間送金網ACHやカードなど既存の決済網は、口座開設に人の手が要り、加盟店手数料で少額取引が採算に合わないことなどから、こうした取引には向きにくいとした。
取引の中心はステーブルコインになるとの見方だ。流通時価総額は9月時点で3,000億ドル(約47兆円)を超え、調整後の取引額は2025年に11.2兆ドル(約1,773兆円)に達した。2026年上半期は8.5兆ドル(約1,345兆円)で、半年で前年通年の約4分の3にあたる。
| 対象 | 期間 | 取引額 |
|---|---|---|
| ステーブルコイン(調整後) | 2025年 | 11.2兆ドル |
| ステーブルコイン(調整後) | 2026年1〜6月 | 8.5兆ドル |
| ビザ | 2025年9月期 | 16.7兆ドル |
| マスターカード | 2025年 | 10.6兆ドル |
ただし、レポートはこれらを直接比較できないと注記している。ステーブルコインの数字には取引所やDeFi、貸借、発行・償還などの取引が含まれ、ビザの数字も現金の取扱いを含む総額で、会計年度も異なる。
2025年に93兆ドル(約1京4,718兆円)を送金したACHとの差も、なお大きい。
一方、2020〜25年の年平均成長率は、ステーブルコインの80%に対し、ACHは約8.5%にとどまった。
ETHへの恩恵は「設計次第」
レポートは、ステーブルコインの利用拡大の影響が、発行・決済の場となるブロックチェーンにも及ぶと指摘する。主要なステーブルコインは複数のチェーンで発行されており、利用者は手数料や技術面から決済先を選べる。
イーサリアムのような誰でも参加できるネットワークでは、ETH
ETHなどのネイティブトークンが合意形成やバリデーターへの報酬、取引手数料の支払いを担う。ステーブルコインの取引が増えればブロックスペースの需要が高まり、こうしたトークンの需要につながる可能性があるという。
ただし、どこまで価値を取り込めるかは、手数料やステーキング、ガス代の肩代わりの仕組みなど、各ネットワークの設計次第だと留保した。
AIエージェント向けの決済規格として取り上げたコインベースのx402にも、同じ条件を付けている。x402は特定のチェーンに依存せず、USDCなどのステーブルコインが主な用途だ。誰でも参加できるネットワークで決済されればネイティブトークンに波及しうるが、度合いは設計によるという。
別の型として挙げたのが、サークルのステーブルコイン向けチェーン「Arc(アーク)」だ。ArcではUSDCでガス代を支払うため、決済が増えるほど、USDCが決済資産と手数料の両面で使われる構図になる。
ビットコインについては、ビットコイン政策研究所の研究を引用した。AIモデルが日常の支払いにはステーブルコインを、長期の価値保存にはビットコインを選ぶ傾向を示したという内容だが、実際のエージェントの行動ではなくシミュレーション上の回答だと断っている。
レポートは、計算資源の利用権がデジタル資産の新たな用途になりうるとも論じた。そのうえで結論では、エージェントによる決済の実績も計算資源市場の流動性もまだ限られ、エコシステムは初期段階にあるとしている。
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