ステーブルコイン最大手のテザー社は23日、米国財務省外国資産管理局(OFAC)および米国法執行機関と連携し、2つのウォレットアドレスに保有されていた合計3億4,400万ドル(約549億円)相当のUSDTを凍結したと発表した。対象アドレスが特定された後、資金のさらなる移動を防ぐ形で凍結が実行された。
単発では過去最大──2アドレスで約2.1億ドルと1.3億ドル
今回の凍結額3億4,400万ドルは、テザー社による単発の凍結措置としては過去最大規模となる。凍結対象の2つのウォレットにはそれぞれ約2億1,290万ドルと約1億3,130万ドルが保有されていた。従来の最大記録は2026年1月にトロンチェーン上の5つのウォレットから凍結された1億8,200万ドルで、今回はその約1.9倍に相当する。
テザー社によると、凍結は米国当局から共有された情報に基づくもので、対象アドレスは制裁回避や犯罪ネットワーク、その他の違法活動に関連していたとされる。CEOのパオロ・アルドイーノ氏は、制裁対象や犯罪ネットワークとの関連が確認された場合は即座に行動すると述べ、パブリックブロックチェーンの透明性が現金にはない追跡可能性を提供していると強調した。
テザー社は現在、65カ国340以上の法執行機関と連携しており、これまでに2,300件以上の案件を支援している。このうち1,200件以上が米国の法執行機関に関連するものだ。累計の凍結資産額は44億ドルを超え、そのうち21億ドル以上が米国当局との連携によるものとなっている。
過去には米国司法省(DOJ)がテザー社の協力を評価した事例もある。いわゆる「豚の屠殺詐欺」(pig butchering fraud)に関連する約6,100万ドルおよび約2億2,500万ドルの資産押収において、テザー社の支援が公式に認められている。
GENIUS法施行で凍結の法的根拠が整備へ──中央集権性への議論も
今回の凍結は、米国でステーブルコイン規制法「GENIUS法」の施行規則策定が進む中でのタイミングとなった。同法は2025年7月に成立し、ステーブルコイン発行者に対して1対1の準備金保有やマネーロンダリング防止措置を義務付けるもので、米国財務省が発行者に対してトークンの凍結・押収を命じる権限も規定している。現在、財務省やFDICが施行に向けたパブリックコメントを募集している段階だ。
テザー社にとって、当局との連携実績の積み上げは規制環境への適応を示す意味を持つ。一方で、発行者が任意にウォレットの資産を凍結できるブラックリスト機能の存在は、ステーブルコインの「中央集権性」として批判の対象にもなっている。分散型取引プラットフォームSmardexの共同創業者ジャン・ローシス氏は、GENIUS法の下でステーブルコインが実質的に政府管理のCBDC(中央銀行デジタル通貨)と変わらなくなる可能性を指摘している。法執行の有効性と、分散型金融の理念との間で、ステーブルコインの位置づけを巡る議論は今後も続くことになる。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=159.5円)




