東京証券取引所を運営する日本取引所グループ(JPX)の山道裕己最高経営責任者(CEO)は4月30日、暗号資産(仮想通貨)の上場投資信託(ETF)について「法整備が整い税金の取り扱いがはっきりすれば、いつでもできる」とブルームバーグのインタビューで語った。暗号資産ETFの組成に関心を示す運用会社は多いとし、早ければ2027年、法改正の進捗次第では2028年の上場もあり得るとの見通しを示した。
「望ましくない」から「いつでもできる」へ──わずか半年の劇的転換
山道CEOの発言は、日本における暗号資産ETFを巡る議論が急速に前進したことを示している。振り返ると、2025年10月31日に金融庁は「金融商品取引業等に関するQ&A」を改訂し、海外で組成された暗号資産ETFを原資産とするデリバティブ商品の国内提供について「望ましくない」との見解を公表していた。当時、市場では「暗号資産ETFが国内で承認されても、株式ETFのような分離課税は適用されないのではないか」との見方が広がった。
しかしその後、状況は大きく動いた。金融庁は暗号資産を金融商品取引法の対象に加える方針を固め、2026年4月10日に改正案が閣議決定された。暗号資産が「決済手段」から「金融商品」へと法的に再定義される道筋が確定したことで、ETFの組成に必要な法的基盤が整いつつある。「望ましくない」から「いつでもできる」への転換は、わずか半年で実現した。
山道CEOが条件として挙げた「法整備」と「税金の取り扱い」のうち、法整備については金商法改正案が国会審議に入る段階にある。税制については、2025年12月の与党税制改正大綱で申告分離課税への移行が盛り込まれたが、適用は金商法施行後の2028年1月が有力視されており、ETF上場の時期もこのスケジュールに左右される。
JPXの二面性──「ETFは歓迎、トレジャリー企業は指数から除外」
ただし、JPXの暗号資産に対するスタンスは単純な「歓迎」ではない。2026年3月には、暗号資産の保有比率が50%を超える上場企業をTOPIXから除外する方針が報じられた。メタプラネットやリミックスポイント、ANAPホールディングスなどビットコイン・トレジャリー戦略を推進する企業が該当する可能性がある。
つまりJPXは、暗号資産ETFという「投資商品」は積極的に上場させたい一方で、暗号資産を大量に保有する「トレジャリー企業」は株式指数から切り離したいという二面的なスタンスをとっている。ETFを通じて暗号資産への間接投資を制度化する一方、暗号資産の価格変動が株式指数全体に波及するリスクは抑制するという、投資家保護と市場拡大の両立を図る設計だ。
中期経営計画で「新アセットクラスへの進出」を明記
JPXは中期経営計画において「新たなアセットクラスへの進出」を掲げており、暗号資産関連の商品はその柱の一つとして位置づけられている。2025年3月の時点で山道CEOは暗号資産を「考えられる新たなアセットクラスの一つ」として言及しており、今回の発言でその方向性がより具体化した形だ。
ラインアップの拡充を通じて幅広い投資家層を取り込みたい考えで、国内の運用会社からの関心の高さも確認されている。米国では2024年にビットコイン・イーサリアムのETFが相次いで承認され市場が急拡大しており、日本でも同様の展開が期待されている。
残る課題──税制改正と投資家保護の制度設計
ETF上場に向けた課題は大きく2つ残されている。第一に税制だ。現行制度では暗号資産の売却益は雑所得として最大55%の税率が適用される。2025年12月の与党税制改正大綱では、金商法改正による投資家保護の法整備を前提に、暗号資産取引への申告分離課税(約20%)の導入と3年間の損失繰越控除の創設が盛り込まれた。適用開始は金商法改正の施行後となるため、早くても2028年1月からとの見方が有力だ。ETFの税務上の取り扱いもこの税制改正と連動する。
第二に、投資家保護の制度設計がある。金商法の下でインサイダー取引規制や情報開示義務が暗号資産にも適用されるが、暗号資産特有の価格変動リスクやハッキングリスクをどこまでETFの開示要件に盛り込むかなど、実務的な詰めが残されている。
山道CEOは同日のブルームバーグテレビジョンとの英語インタビューで、世界の資金を呼び込むには為替レートの安定性が重要だとも指摘し、円の対ドル相場は140円台か130円台程度が適正との見方を示した。暗号資産ETFの上場は、JPXにとって海外投資家を含む幅広い資金を東京市場に引きつけるための戦略の一環として位置づけられている。
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