分散型取引所Hyperliquid(ハイパーリキッド)のエコシステムを基盤とする政策提言団体Hyperliquid Policy Center(HPC)と、同ネットワーク上でデリバティブ市場を展開するtrade[XYZ]は18日、米証券取引委員会(SEC)にIPO制度の近代化に関する意見書を提出した。
SpaceXの上場では約83億ドル(約1兆3,247億円)が発行体の手取りにならなかったという。
上場前の株価を参照する「IPOP」
意見書は、アトキンスSEC委員長が5月26日にスタンフォード大ロックセンターで表明した、IPO近代化に関する意見募集への回答だ。
提出したのは、ハイパーリキッドのエコシステム基金が2026年2月に設立したHPCと、同ネットワーク上で株式パーペチュアルを展開するXYZ Ltd.(trade[XYZ])だ。
両者が説明するIPOPは、上場を控えた未公開企業の想定株価を参照する現金決済型のパーペチュアル(無期限デリバティブ)だ。時価総額ではなく1株当たりの価格を対象とし、決済にはステーブルコインUSDCを用いる。
保有しても株式やIPOの配分、トークン化株式、発行体への請求権は一切生じない。議決権も配当請求権もなく、価格エクスポージャーのみを提供する商品だと位置付けている。
展開期間は短い。trade[XYZ]は発行体が登録届出プロセスに入った後に市場を立ち上げ、上場が完了すると外部価格を参照する通常のパーペチュアルへ転換する仕組みをとる。最初のCerebras市場は13日間、SK Hynix市場は1日間で役割を終えた。
上場が猶予期間を超えて延期された場合は、市場開設から決済までの時間加重平均価格で代替決済される。買収や非公開化など、上場に代わって価格が確定する事象についても個別の規則をあらかじめ定めている。
これらの市場は、第三者が独自のパーペチュアル市場を立ち上げられる仕組み「HIP-3」の上に構築されている。意見書によると、HIP-3経由の市場は累計取引高4,500億ドル超、建玉は40億ドル近くに達する。
5市場の乖離は0.44〜7.23%と主張
意見書は、ライフサイクルを終えた5市場の実績を挙げている。上場直前のIPOP価格と実際の初値との乖離は0.44〜7.23%に収まったとする。
Cerebrasは5月14日にナスダックへ上場した。引受業者は当初1株115〜125ドルを提示し、需要を受けて150〜160ドルに引き上げたうえで185ドルに決定したが、初値は350ドルと公開価格を89.2%上回った。前日のIPOP価格は289ドルで、公開価格はこれを36%下回っていた。
SpaceXは6月12日、約5億5,560万株を1株135ドルで売り出した。初値は150ドルで、差額は約83億ドルにあたる。SK Hynixの265億ドル(約4兆2,294億円)規模の売り出しは1ADS当たり149ドルで、初値170ドルとの差は約37億ドル(約5,905億円)だった。
米国上場の4件では、公開価格が前日のIPOP価格を10.8〜38.4%下回り、初値はいずれも公開価格を11.1〜89.2%上回ったとしている。
SK Hynix市場では、上場1分前のIPOP価格169.26ドルが初値との乖離0.44%に収まった。意見書は、伝統的メディアが報じた寄り付き前予想の約174ドル(2.4%の誤差)より正確だったと主張する。
一方、Quantinuum市場では前日のIPOP価格97.43ドルが直前に72.92ドルまで下落し、初値68ドルを7.23%上回った。5件中で最も乖離が大きかったが、意見書は上場が近づくにつれて市場が修正に動いた例だと説明している。
ただし意見書自身、アンダープライシングの一部は意図的なものだと認めている。ブックビルドで強い需要を示した引受業者への報酬にあたり、初日の値上がりが上場後の需要を支える面もあるため、発行体は長年これを受け入れてきたとする。
標本は5市場にとどまり、数値はいずれも自社商品を運営するtrade[XYZ]の集計によるものだ。
米国では未提供、商品分類が最大の論点
IPOPを含むtrade[XYZ]の市場は、現在いずれも米国居住者に提供されていない。trade.xyzのインターフェースは、米国その他の制限地域に対してジオブロッキングとウォレットスクリーニングを実施している。
意見書は、単一銘柄の株式を参照するパーペチュアルは、証券ベーススワップと証券先物のいずれに分類されてもSECの管轄下に入るとの見解を示す。そのうえで商品分類、開示の枠組み、上場適格性の条件、投資家アクセス、市場の健全性という5項目を検討課題として挙げた。
とりわけ商品分類は、登録や取引の場、清算、証拠金といった規制上の帰結を左右するため最優先の論点だと位置付ける。開示については、発行体向けの開示制度は商品の性質を正しく表さないとして、契約の仕組みや資金調達率、清算基準などデリバティブ自体に即した内容を求めた。
背景には、SECとCFTCによるパーペチュアル規制の調整がある。CFTCは5月29日、米取引所へのパーペチュアル上場を先物として初めて承認し、政策声明で株式を参照するパーペチュアルは両機関の審査が有益だとの見方を示していた。
今回の文書はあくまで民間からの意見表明であり、SECが商品を承認したものではない。意見書は、市場データや技術文書の提供を含め、SEC職員との議論の機会を求めるとして結ばれている。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=159.6円)




