実物資産のデジタル台帳を手がけるアウラムは29日、金インゴットを金庫内に保管したまま、物理的に動かさずに所有権を移転する売買の技術実証(PoC)に成功したと発表した。特定の金インゴット1本ごとの所有権を、ブロックチェーン上のNFTとして記録する仕組みで、関連技術は特許出願中だという。
「指図による占有移転」をブロックチェーンで実装
今回の実証で使われたのが、民法第184条の「指図による占有移転」だ。現物を動かさずに、占有を預ける相手への指図によって引き渡しを成立させる法理で、倉庫の現物取引などで使われてきた。
アウラムは、この法理をデジタルに再現した。金インゴットを金庫に置いたまま、売り主による指図と買い主による承諾を、それぞれ別のブロックチェーン上の取引として記録し、台帳上のNFTの所有者情報を買い主に更新する。一連の過程を、誰でも検証できる改ざん困難な記録として実装した。
ただし、今回は技術と法的構成を検証する第一段階だ。実際の代金決済は伴わず、取引も代表者が両社を兼ねる関係者間で、テストネット上で行われた。今後は、資本関係のない第三者を交えた検証を進めるとしている。
既存の金預かりとの違いと、法的な位置づけ
アウラムは、この仕組みが従来の金の預かりサービスと根本的に異なると説明する。一般的な預かりは、預けた金の所有権が地金商に移り、顧客は同等の金の返還を求める「債権」を持つにすぎない。地金商が破綻すれば、顧客は一般債権者として扱われる。
これに対し、今回のモデルは顧客が特定の金インゴットの所有権そのものを持ち続ける点が違う。価格に連動する暗号資産(金トークン)とも異なり、現物1本の所有権を記録・移転する設計だという。
法的な整理も進めている。アウラムは2026年4月、経済産業省のグレーゾーン解消制度を通じて法務省に照会し、現在は回答を待つ段階だ。金融庁のFinTechサポートデスクからは、このNFTが暗号資産にも集団投資スキーム持分にも該当しないとの見解を得たという。同制度は許認可ではない。
アウラムは、この技術を使った金インゴット取引プラットフォーム「KINGOT」を開発中だ。2026年度中に法人向けの招待制で始め、倉庫事業者との提携を経て、2027年度以降に本格展開と個人対応を予定する。今回あわせて、保管を担う倉庫事業者や、取引に参画する地金商などのパートナー募集を始めた。



