日本取引所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所は6日の第29回「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」で、上場後に企業内容が大幅に変わり上場適格性に重大な懸念が生じた場合、新規上場審査に準じた審査を速やかに行う制度を新設する方向性を示した。上場部の資料4に記載した。
審査対象に「経営体制等の大幅な変更」を追加
東証は2月18日の第26回会議で、新規事業の開始などにより売上の大半を占める事業の内容が大幅に変化し、企業の継続性・収益性等の観点から重大な懸念が生じるケースを審査対象として提示していた。

事業内容の大幅な変更の事例は「メンバー限り」とされ、個別の事例は非公表となっている(出所:東京証券取引所「第29回 市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」資料4)
今回はこれに、特定の株主により、または特定の株主に関連して支配権・経営体制が大幅に変化し、新規事業の開始等も複合的に発生するケースを加えた。
判断の軸は類型ごとに分けている。
事業内容の大幅な変更は企業の継続性・収益性等、経営体制等の大幅な変更は企業経営の健全性やガバナンス・内部管理体制の有効性等の観点から、それぞれ重大な懸念の有無を見る。懸念がなければ追加対応はない。
審査に適合すれば上場適格性ありとして上場を維持し、不適合と判断された場合は上場廃止となる。適合後も、必要に応じて状況の報告等を求めることを想定するとした。
審査中の銘柄には、その旨を表示して注意喚起する。
「不公正ファイナンス」の4段階を図示
資料はもう一つ、上場適格性に懸念が生じる業態転換とは別の類型として、小規模な上場会社が不公正ファイナンスに利用された疑義のある事例を挙げた。想定するのは時価総額50億円未満の企業で、融資が受けられない業績不振の企業や、上場維持基準への抵触が懸念される企業が多いとしている。
東証が示した典型的な流れは4段階だ。
- ①支配権の異動:第三者割当増資や株式譲渡、市場での買付けにより、特定の株主が支配株主・大株主(20%〜など)に該当する。ウルフパック戦略を用いる事例もある
- ②経営体制の変更:特定の株主の関係者を取締役として派遣し、既存の取締役の辞任などを通じて経営体制が変わる
- ③新規事業の開始等:株価の吊り上げを企図して、新規事業の開始・買収や業務委託契約の締結等を公表する。裏付けとなる事業基盤等に懸念のある事例もある
- ④ファイナンス:新規事業のための資金等として、特定の株主に対して第三者割当増資を実施する

支配権の異動から第三者割当増資に至る典型的な流れ(出所:東京証券取引所「第29回 市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」資料4)
この流れの結果、既存株主の権利が希薄化や資金流出によって棄損されると東証は指摘する。④の段階では、特定の株主への利益供与や資金流出といった不公正ファイナンスの疑義がある事例も発生しているとした。
個別の事例は非公表としている。
トレジャリー企業は対象に入るのか
資料4に「暗号資産」の記載はない。
ただし2月の第26回会議の議論について、大和総研の森駿介研究員は3月12日付のレポートで、明記はされていないものの、上場適格性に懸念が生じるような事業内容の大幅な変更を行う事例には暗号資産(仮想通貨)トレジャリー企業も含まれるとの見方を示していた。
同レポートによると、国内では上場企業のうち約30社が適時開示を通じて暗号資産の購入を公表している(同レポート執筆時点)。
資料には海外取引所の制度も再掲された。ニューヨーク証券取引所(NYSE)は2024年7月、IPO時に従事していなかった、または重要でなかった事業分野へ主要事業を変更した場合に上場適格性を再審査する制度を導入している。形式基準は対象外の実質審査で、上場適格性がないと判断された場合は上場廃止となる。
オーストラリア証券取引所(ASX)も、事業内容や規模に重大な変更がある場合、必要と認めたときは株主による承認や新規上場と同様の申請・審査手続きを求めることができる。
東証は審査対象を限定する姿勢を強調している。
企業の事業活動や株主によるエンゲージメントを阻害しないよう、審査の対象は上場適格性に重大な懸念が生じる場合に限定すると資料に明記した。制度の導入時期は示されていない。
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