米ロサンゼルス市警(LAPD)の元警官エリック・ヘイレム被告(38)が4日、州刑務所での終身刑に加えて15年の刑を言い渡された。ロサンゼルス・タイムズが報じた。
2024年12月にロサンゼルスのコリアタウンで起きた住居侵入強盗事件で、共犯者らとともに10代の若者から35万ドル(約5,519万円)相当の暗号資産(仮想通貨)を奪った罪に問われていた。
警官になりすまし、18階の部屋へ
公判での証言によると、ヘイレム被告は2024年12月、3人の共犯者とともに捜索令状を執行する警官を装い、コリアタウンの高層マンションに侵入した。標的は、部屋を借りていた17歳の少年だった。
一行は警察を示すベストを着用し、被告のレンタカー事業が所有する緑色のレンジローバーとオレンジ色のランボルギーニで現場に乗り付けた。18階まで上がり、共謀者から入手したアクセスコードで部屋に入ったとされる。
LAPD支給の手錠で少年の交際相手を拘束したうえで少年本人も拘束し、撃つと脅してビットコインの入ったハードドライブを渡させた、と2人の被害者は証言した。
陪審は3月、2週間の公判を経て、1日足らずの評議で誘拐と強盗などの罪で有罪の評決を下していた。
「純然たる強欲」と裁判官
ヘイレム被告は、当初の弁護団が証人を呼ばず重要な証拠を精査しなかったとして再審を求めたが、ロサンゼルス郡上級裁判所のミルドレッド・エスコベド裁判官はこれを退けた。
裁判官は、前の弁護団は合理的に有能な弁護士の水準を十分に上回る働きをしたとし、問題は弁護ではなく「被告に不利な圧倒的な証拠」だったと述べた。
エスコベド裁判官は量刑にあたって何度も考えを変えたと明かした。被告の家族や友人からは、立派で思いやりのある父親だとする手紙が届いていたという。しかし公判で示された証拠は、それとは異なる人物像を浮かび上がらせたとし、被告は「純然たる強欲(sheer and utter greed)」から暴力に訴えたと指摘した。
ヘイレム被告は強盗の時点でLAPDを離れて2年近くが経っていたが、予備警官の地位は残していた。13年間在籍したベテランで、高級車レンタルや俳優向けの遠隔オーディションアプリなど複数の副業を営んでいた。検察官は最終弁論で、被告が市民を守るという警官としての宣誓を破ったと陪審に訴えた。
「被害者もまた犯罪者だった」
事件には込み入った背景がある。裁判官は量刑時、ヘイレム被告が標的にしたのは「彼ら自身が犯罪者だったため、被害者と見なされるべきでないかもしれない」人物だったと述べた。
公判での検察側の説明によれば、被害者の少年は他人をだますことによっても暗号資産の財産を築いていたとされる。ロサンゼルスでは、詐欺などで暗号資産を稼いだ若者たちと、それを暴力で奪おうとする者たちの応酬が問題になっている。
もっとも裁判官は、被害者側に問題があったとしても被告の行為は正当化されないと明言した。警官になりすまして権力を悪用したことは「凶悪で悪質」だとしたうえで、量刑の理由は被告が元警官だからではなく、あくまで「この事件の事実」にあると強調した。
被告は15年の刑期の大半を終えてから終身刑の服役に入る。検察当局によると、7年後に仮釈放の資格を得る。なお被告は、保険詐欺と、コリアタウン事件の数日前に起きたとされる別の暗号資産関連の強盗事件でも、なお訴追を抱えている。共犯者らは公判前で、無罪を主張している。
増える暗号資産保有者への「レンチアタック」
今回のように、暗号資産の保有者を暴力で脅して資産を奪う手口は「レンチアタック」と呼ばれ、世界的に増加している。ブロックチェーンセキュリティ企業のCertiKによると、2026年上半期に世界で確認されたレンチアタックは52件、被害額は1億2,410万ドル(約195.7億円)にのぼった。
警官へのなりすましも、暗号資産犯罪で繰り返し使われる手口だ。2026年3月にはフランスで、警官を装った3人組がある夫婦をナイフで脅し、100万ドル相当のビットコインの送金を強要する事件が起きている。自らの暗号資産保有を公にしないことが、こうした標的化を避けるうえで重要だと専門家は指摘している。
関連:26年上半期の暗号資産レンチ攻撃、33%増──被害額は前年の11.8倍に
関連:コールドカードのシード生成に不具合──134億円超のBTCが流出
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.7円)


