米CNBCの投資番組「マッドマネー」で司会を務めるジム・クレイマー氏が、保有するビットコイン(
BTC)をすべて売却する意向を表明した。IBMのアービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)が、量子コンピューターによる暗号解読リスクに言及したことが決断の発端となっている。同氏は3日、番組内でこの意向を明らかにした。
発端はIBM CEOの「3〜4年」発言
7月30日に公開されたCNBC「マッドマネー」のインタビューで、クレイマー氏はクリシュナ氏に対し、量子コンピューターの進歩が自身の暗号資産を守る暗号方程式を破りうるのか質問した。これに対しクリシュナ氏は「3〜4年の猶予を見ておくべきで、その時点でかなり神経質になった方がいい」と回答している。
クレイマー氏は「3〜4年?そんなに長くない」と驚き、視聴者に向けて「これは聞いておくべきだ」と述べた。
そして8月3日、クレイマー氏はクリシュナ氏の警告を根拠に、ビットコインを売却すると表明した。米ザ・ストリートによると、ビットコイン支持者は反発するかもしれないが、クリシュナ氏は「ビットコインと量子コンピューターの両方を理解している」ため、その見立てを信頼するとしている。クレイマー氏はこれまでもビットコインへの評価を何度か変えてきた経緯がある。
市場は「インバース・クレイマー」で逆張り
クレイマー氏の「全売却」表明は、広範な売りを引き起こさなかった。むしろ多くの暗号資産トレーダーは、これを絶好の買い場と捉えた。
クレイマー氏の弱気な相場観がしばしば市場の底と重なってきたことから、暗号資産コミュニティでは「インバース・クレイマー(クレイマーの逆張り)」という言葉が再び広まっている。SNS上では、同氏の売却表明をむしろ「買いシグナルか」と半ば冗談交じりに受け止める声が相次いだ。
実際、発表後の値動きは限定的だった。米ザ・ストリートによると、報道時点でビットコインは約63,800ドル(約1,000万円)で取引され、24時間で約0.5%上昇している。ただし、クレイマー氏の実際の保有量や保有規模、ウォレットアドレスは開示されておらず、「全売却」の規模は明らかになっていない。
「3年」は業界の議論より攻めた時間軸
クレイマー氏が示した時間軸には、専門家から慎重な見方もある。一部の報道では、クレイマー氏自身が「量子コンピューターが3年以内にビットコイン市場を追い越しうる」と表現したとされ、クリシュナ氏が語った「3〜4年」よりもさらに短い。
グーグルの研究者は2026年3月、量子コンピューターの進歩により、ビットコインの暗号を攻撃するのに必要なハードウェアが従来の推定より約20分の1に減る可能性があると指摘した。ただし、実用化までにはなお数年かかるとみられている。
一方、防御側の動きも進む。ビットコインの開発者コミュニティは、ポスト量子署名に対応する新しいアドレス形式などのアップグレードを提案してきた。イーサリアムの研究者も、今後10年内に耐量子暗号(ポスト量子暗号)へ移行する方針を掲げている。
なお、クリシュナ氏はインタビューのなかで、量子コンピューティングが「2030年代末までに1兆ドル(約157兆円)規模の価値を生む」との見通しも示した。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157円)


