暗号資産(仮想通貨)取引所ビットメックス共同創業者のアーサー・ヘイズ氏は11日、新たなエッセイ「Yen-quake」を公開した。円安の是正が本格化する局面に入ったとの認識を示し、その過程で生じるドル流動性の拡大がビットコイン(
BTC)を押し上げると主張している。
円高への3つの道、うち2つは塞がっている
ヘイズ氏は、円が世界で最も割安な通貨であり、米中両国と日本の有権者にとって共通の懸案になっていると位置づける。そのうえで、円高を実現する方法は3つしかないとした。
1つ目は日銀による大幅な利上げである。ただし日銀は長期の(YCC)イールドカーブ・コントロールを通じて国債の最大保有者となっており、金利上昇は含み損の拡大に直結する。財政側も国債の利払い増を避けたい。
同氏は2024年7月の事例も挙げた。日銀の想定外の利上げでドル円が160円から140円へ急変し、円キャリー取引の巻き戻しからナスダック100と日経平均が10%超下落した局面である。
日銀は8月に、将来の利上げ判断で市場動向を考慮すると表明。市場は落ち着いた。急激な正常化に日銀は耐えられないというのがヘイズ氏の見方だ。
2つ目はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など日本の機関投資家が海外資産を売却して資金を国内に戻す方法だ。片山さつき財務相がGPIFの運用方針を国内重視へ変えるべきだと述べた一方、GPIF側は加入者の利益を優先すると反論している。
ヘイズ氏は、この道も実際には塞がっているとみる。日本勢が米国債と米株の買い手から売り手に転じれば、米国が財政を支える市場が損なわれる。米国が日本の安全保障を担保している以上、日本側も踏み切れないという理屈だ。
本命はFIMAレポを使った円買い
残る3つ目が、ヘイズ氏が本命とする手法である。財務省が保有する米国債をFRBのFIMA(外国・国際通貨当局)レポ制度に差し入れてドルを借り、そのドルを売って円を買い、得た円で国債と日本株を購入するという流れだ。米国債を売らずに円買いの原資を作れる点が、この手法の要になる。
同氏はこのスキームの帰結を4点挙げた。FRBがFIMA向けのドルを供給するためバランスシートが拡大すること、ドル円が下落すること、日本国債の利回りが低下すること、そして日本株が上昇することである。
背景には7月31日の日米協調介入がある。15年ぶりとなるこの共同行動の後、ベッセント米財務長官はFIMAレポ制度を重要な安全網と位置づけ、今後数カ月で規模を拡大するよう促した。日本の財務省も同制度の活用方針を示している。
障害は制度の上限だ。FIMAレポには1カウンターパーティあたり600億ドル(約9兆5,520億円)の上限がある。ヘイズ氏によれば、直近の介入では1,000億ドル(約15兆9,200億円)超を投じて円を5%押し上げただけで、効果は数営業日で減衰した。上限の撤廃と対象先の拡大が要る。
誰が決めるのか。ヘイズ氏は、FOMCが制度変更の権限を外国通貨小委員会に委譲していると説明する。議決権を持つのはウォーシュFRB議長、ウィリアムズNY連銀総裁、ジェファーソン副議長の3名で、議事録も投票結果も公表されない。同氏は変更が実行されるとみている。
ただしこの点は見解が分かれる。ロイターは上限の変更にはFOMCの過半数の承認が必要だと報じており、3名の判断だけで決まるとするヘイズ氏の説明とは食い違う。
供給されうる規模は、FIMAの担保となる米国債の保有額から試算している。日本政府が1兆1,430億ドル(約181兆9,656億円)、GPIFが2,300億ドル(約36兆6,160億円)で、合計1兆3,730億ドル(約218兆5,816億円)。コロナ禍でFRBが供給した約4兆ドル(約636兆8,000億円)の3分の1にあたる。
ETHとENAに言及、BTCは買い持ちと明かす
ヘイズ氏は、この流動性を反映する資産としてビットコイン、現物の金、金鉱株を挙げた。すでにビットコインを大きく買い持ちしているとしている。
暗号資産では、大型銘柄でイーサリアム(
ETH)を挙げた。2025年に過去最高値を更新しなかった主要銘柄であること、RWA(現実資産のトークン化)のセキュリティ層になることを理由としている。同氏は8月5日のエッセイでもETHの2026年末目標を5,000ドルとしていた。
加えて、エセナ(
ENA)には5〜10倍の余地があるとした。根拠に挙げたのは、USDeがドル建て流通量でステーブルコイン6位を維持している点だ。
現状はビットコインのベーシス利回りが低く、USDeを保有する妙味が短期米国債とほぼ変わらない。この結果、流通量は高値から75%減り、ENA価格は90%超下落した。
ドル流動性の拡大でBTCが上昇すればベーシス利回りが跳ね、USDeへの資金流入が戻るという筋書きである。買い戻し(バイバック)が実施されていない点は弱点として自ら認めている。
ヘイズ氏が保有を明言しているのはビットコインのみで、ETHとENAについては現在の保有の有無を示していない。同氏はエッセイ冒頭で、記載内容は個人的見解であり投資判断の根拠や推奨と解されるべきではないと明記している。
なお同氏は、まだドル残高を最低水準まで落としてはいないとしている。ウォーシュ議長が小委員会を招集し、FIMAの規則を変更するのを待つ構えだ。
関連:アーサー・ヘイズ、イーサリアムに強気──2026年末目標5,000ドル
関連:アーサー・ヘイズ「2025年ビットコイン低迷は理論どおり、2026年は上昇」
※本記事は特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=159.2円)


