金融庁は7月24日、「FinTech実証実験ハブ」第13号案件の実験結果を公表した。暗号資産(仮想通貨)交換業者の間で詐欺等に関連が疑われるブロックチェーンアドレスを共有し、共同で分析する枠組みの有効性と法的論点を検証したもので、申込者は日立製作所、参加はほか17社にのぼる。
疑わしいアドレスの共有、財産保護例外を適用しうると整理
最も実務に影響するのは、個人データの第三者提供に関する整理だ。金融庁は個人情報保護委員会の助言を踏まえ、疑わしいアドレス等の提供について、個人情報保護法27条1項2号の財産保護例外を適用しうるとの見解を示した。
ただし無条件ではない。提供が財産保護に必要かどうかは、本人が被る不利益と提供の必要性を踏まえ、個別具体的な事例に即して総合的な利益衡量により判断するとしている。考慮要素は、本人が詐欺等に関連している蓋然性や、提供データと提供先の範囲の合理性だ。
同意取得が困難と評価しうるケースも2つ示された。連絡手段や本人との関係、緊急性を踏まえ、合理的な手段を尽くしても応答がないと言える場合。そして本人が詐欺等に関与していることが合理的に疑われ、同意を取得することで犯罪収益の隠匿等を誘発するおそれがある場合である。
同意に基づいて第三者提供を行う場合についても、同意は提供時点で存すれば足りるとした。有効な同意に基づく限り、過去に収集した個人データの第三者提供も認められるという整理だ。
参加は日立ほか17社、主要取引所と発行者が並ぶ
金融庁は参加事業者名を公表している。あおぞら銀行、JPYC、GMOコイン、Chainalysis Japan、DCP、Digital Platformer、日本電気(NEC)、日本ブロックチェーン基盤、finoject、ビットバンク、楽天ウォレット、Laser Digital Japanの12社に加え、支援決定後にあずさ監査法人とデジタルアセットマーケッツが参加した。
このほか企業名非公表が3社ある。主要な暗号資産交換業者と電子決済手段(ステーブルコイン)の発行者、ブロックチェーン分析事業者が同じ枠組みに並んだ形だ。
共有された情報は、疑わしいアドレス、その根拠となるトランザクション情報、リスクカテゴリ、リスクスコア、検知理由、情報源、確認日時から構成される。リスクスコアはカテゴリによって異なり、緊急・高・中・低の4段階といった形をとる。
アラートのみに依存しないよう金融庁が助言
実験では4点が確認された。個社単位では把握しにくい情報を業界横断で活用しうる可能性、リスト照合型と機械学習型を組み合わせることで既知リストに載っていないリスク兆候も補完的に把握しうること、3つの監視機能それぞれの実務的な運用可能性である。
そして4点目が限界だ。モニタリングシステムのアラートだけでは、疑わしい取引の届出(STR)や取引制限、電子決済手段の凍結・消却等の判断に用いる情報としては十分でない場合があり、資金の流れや公開情報、関連アドレスの追加調査を要する場合があることが確認された。
金融庁は、これらの判断は特定事業者がその責任において行う必要があり、アラートにのみ依存することがないようにする必要があると助言した。機械学習モデルを使用する場合を含め、アラートの根拠が分かるようにする必要があるとしている。
誤検知への備えも求めた。顧客の権利利益が不当に害されないよう、データの関連性・正確性・最新性を確保する条件設定や、訂正・削除・権利行使の手続整備の検討が必要だとした。
日立は10月にモニタリングサービスを商用化
日立は30日、本実証を通じて実務適用可能性を確認したと発表し、2026年10月より金融機関や暗号資産関連事業者向けにAMLモニタリングサービスの提供を開始する予定だと明らかにした。提供するのは事後モニタリング、オンライン即時評価、トークンモニタリングの3機能だ。
将来的には、業界横断のリスク情報の連携と調査支援を担う「AML共同センター」構想の具体化を関係各社と進めるとしている。最終的な対応の判断は各事業者が行うものだと明記した。
実証は2026年3月から5月に実施された第2回目で、第1回は2025年2月から4月に12社で行われている。金融庁は今後、暗号資産等の分野においても「共助」によるマネー・ローンダリング対策等の高度化・効率化が期待されるとしている。
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