一般社団法人 新経済連盟は11日、「規制改革提言2026」を公表し、暗号資産(仮想通貨)証拠金取引のレバレッジ上限を見直すよう求めた。現在は個人向けについて銘柄を問わず一律2倍とされているが、これをリスクに応じて暗号資産の種類ごとに設定できるようにすべきだとしている。提言は11分野42項目・59事項で構成され、暗号資産に関する項目は「ビジネス展開関係」に置かれた。
一律2倍から銘柄ごとの設定へ
新経連は提言で、暗号資産証拠金取引市場の健全性を取り戻し、適切な保有・利用による普及を促すため、レバレッジの上限をリスクに柔軟に対応しつつ種類ごとに設定できるようにすべきだと主張した。個人向けの倍率は2021年以降、銘柄にかかわらず2倍に固定されている。
同じ方向の要望は、業界団体から3年前に出されていた。
一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は2023年10月、一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)宛てに改正要望を提出している。個人向けについても法人向けと同様に、個別銘柄ごとに過去のボラティリティに基づいて倍率を算出する案を示した。新経連の提言はこの考え方を踏襲している。
25倍から2倍へ、3段階で下がった上限
暗号資産証拠金取引のレバレッジは、当初は自主規制のもとで外国為替証拠金取引(FX)と同じ25倍で運用されていた。
2018年10月にJVCEAの自主規制規則が施行され、2019年10月から上限が4倍となった。続いて2020年5月に改正金融商品取引法が施行され、1年の経過措置を経て2021年5月から現行の2倍が適用されている。
25倍から2倍まで、3年足らずで12分の1以下に下がった計算になる。
金融庁は制度整備の説明資料で、主要な暗号資産にも価格変動の激しいものが複数あることと、利用者に対する「規制の簡明性確保」の観点を挙げ、暗号資産の種類によらず2倍とすると説明していた。
一方、法人向けについては、暗号資産のペアごとに必要な証拠金率を週次で算出する方式が採られている。
国内シェアは1〜3%に縮小
JCBAの要望書によると、レバレッジが25倍だった2017年4月時点で、ビットコイン
BTCの対日本円取引量はグローバルで約50%を占めていた。2倍が適用された後の2023年4月には、これが約1〜3%まで縮小している。
提言には、国内の証拠金取引高と海外主要取引所の無期限先物取引高を2021年1月=100として並べた指数グラフが添えられている。海外分はバイナンス(Binance)やバイビット(Bybit)など9取引所の公開APIから、BTCとETHのUSDT建て無期限先物を集計したものだ。

国内の指数は2021年前半に100から20前後まで落ち込み、以降は低い水準で横ばいが続く。海外9取引所の合計は上下を繰り返しながら伸び、2025年後半には200を超えた。新経連はこれを、グローバルで右肩上がりに推移するなか国内だけが低迷を続けている状態だと表現している。
他の金融商品との差も大きい。
同要望書が示した2022年度の比較では、上限2倍の暗号資産の国内年間取引高が29.9兆円だったのに対し、上限25倍のFXは1京2,074兆円で403倍の規模だった。株式は上限3.3倍で647兆円、CFD取引は5〜50倍で161兆円となっている。
ただしFXは、上限が25倍でも、建玉を顧客の預託証拠金で割った実効レバレッジは4〜5倍程度にとどまる。上限がそのまま実際の取引倍率になるわけではない。
国内でも、JVCEAが公表する法人向けレバレッジは4〜9倍で推移してきた。2023年10月時点のBTC/JPYは9.01倍で、個人向けの2倍とは4倍以上の開きがある。
新経連は、こうした低迷の裏で利用者が高リスクのオフショア市場に流出しているとみている。JCBAが調べた無登録の海外取引所5社は、レバレッジ100〜125倍、取扱銘柄200以上という条件を提示していた。
2022年11月に破綻した暗号資産取引所FTXでは、預けた資金が返還されていない国内利用者も残る。
税制は動いたが、倍率は内閣府令のまま
個人向けレバレッジの上限は、金融商品取引業等に関する内閣府令で定められている。暗号資産を巡る制度は2026年に大きく動いたが、この倍率規制はその枠外にある。
暗号資産の規制を資金決済法から金商法へ移管する改正法は7月に成立し、暗号資産は有価証券とは異なる金融商品として位置づけられた。課税面でも、申告分離課税20%への移行が決まっている(関連:金商法改正が成立)。
新経連は同じ9月11日に「2027年度税制改正提言」も公表した。暗号資産税制では、取引業者を介さない個人間の取引にも申告分離課税を適用すること、暗号資産同士を交換する都度ではなく法定通貨に交換する際にまとめて課税することなどを求めている。
新経連は、提言をもとに関係各所へ働きかけるとともに、7月21日に閣議決定された「規制改革実施計画」に位置づけられた項目のフォローアップを求めるとしている。
関連:仮想通貨の税率、最大55%から20%へ──金商法改正が成立
関連:日本政府、仮想通貨を「金融商品」に──金商法改正案を閣議決定


