タイ証券取引委員会(SEC)は、デジタル資産事業者を通じたステーブルコインの取引を規制する原則について、9月10日付の意見募集文書を公開した。顧客の口座への入庫と出庫を、本人名義であることが確認された口座またはプライベートウォレットとの間に限る内容が柱となる。9月3日の理事会決議に基づくもので、意見の締切は9月25日。まだ原則の段階であり、最終規則ではない。
本人名義でなければ出し入れできない
案の中核は、送り手と受け手を同一人物に限定する仕組みだ。他人の口座やプライベートウォレットから、タイのデジタル資産事業者の顧客口座へステーブルコインを入れることを禁じる。事業者が国内か海外かは問わない。
出庫も同じで、顧客口座から他人の口座やプライベートウォレットへ送ることはできなくなる。本人名義の口座またはウォレットとの間でのみ、出し入れが認められる。
海外の事業者やプライベートウォレットとやり取りする場合、送金元と送金先の双方が本人のものだと本人確認を済ませている必要がある。あわせてトラベルルール、顧客の分類、マネーミュール口座や制裁リスト該当者でないかの確認、ブロックチェーン分析ツールによる追跡、疑わしい取引の届出も求められる。
SECは脚注で、この方向性が韓国や香港特別行政区、スイスといった他国の規制と整合すると説明している。
金額にも制限がかかる。海外のデジタル資産事業者やプライベートウォレットからタイの顧客口座への入庫は、1日1人あたり、事業者ごとに500万バーツ(約2,330万円)を上限とする。出庫にも同じ上限が別に適用される。
金額は顧客の収入源や財務状況と整合していなければならない。KYCで把握した情報と合わない場合は、EDD(厳格な顧客デューデリジェンス)の対象になる。
ただしSECは、実務上は顧客口座への入庫そのものを止められないと認めている。そのうえで500万バーツを超えた場合の対応を今後定めるとし、超過分の凍結を例として挙げた。
一方、タイ国内の事業者同士で本人名義の口座間を移す場合は、この上限が適用されない。送金元と送金先の両事業者がトラベルルールを適用していることが条件だ。
適用除外は他にも3つある。デジタル資産事業者自身が事業目的で行う移転、タイ中央銀行の監督下で個別に認可を受けた事業者、そしてステーブルコインとバーツのペアを担当するマーケットメイカーだ。
背景に取引額の増加、施行は告示から60日後
SECは背景として、2023年から現在まで取引額が継続的に増加するなかで、資金洗浄やテクノロジー犯罪、国際送金規制の回避に該当しうる行動パターンを確認したと説明している。文書はUSDTやUSDCを具体例として挙げた。
案の作成にあたっては、タイ中央銀行とタイデジタル資産事業者協会、事業者と協議を重ねたという。
意見募集の期間は15日間と短い。SECは「緊急性の高い論点であるため」と理由を明記している。
今回の案にはこのほか、マーケットメイカーや流動性提供者の監督、ソース取引所の規則改正、プラットフォーム外での取引の扱いも含まれる。施行時期についても記載があり、ステーブルコインの規制は告示が効力を生じた日から60日後に適用される予定だ。
タイは8月25日付の告示でデジタル資産の移転にトラベルルールを導入しており、こちらの施行は2027年2月27日となっている。
※価格は執筆時点でのレート換算(1バーツ=4.66円)


