米国の証券取引アプリ大手で、独自のレイヤー2「ロビンフッド・チェーン」上で株式トークンを手がけるロビンフッド共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のVlad Tenev(ブラッド・テネフ)氏は12日、株式のトークン化に発行体企業の同意が必要かどうかを論じた文書を公開した。
企業が自社株のトークン化を承認または拒否できるべきか、という問いに対し、商品の構造次第で答えは変わるとの立場を示している。同社は今月に入り、米映画館大手AMCから自社株トークンの取引停止を要求されている。
同意が必要な場合、不要な場合
テネフ氏はまず3つの原則を挙げる。ひとつは投資家の財産権で、公開会社の株式は譲渡可能な個人財産であり、保有者がどう持ちどう使うかを決められるとする。
次に発行体の権限。企業が支配するのは自らが発行した証券に付随する権利であって、第三者がその周辺に作るあらゆる金融商品ではないという考え方だ。3つ目が技術中立性で、同意の要否は商品が生む権利義務で決まるべきであり、ブロックチェーンを使うかどうかではないとする。
この原則から導かれる判定基準は明快だ。原株に付随する権利を変える、会社の公式な株主名簿を置き換える、あるいは会社や名義書換代理人に新たな義務を課す商品であれば、発行体が関与すべきだとする。
逆に、譲渡自由な株式を保有または参照する別個の金融商品を作るだけで、発行体の権利や義務、正式な株主記録を変えないのであれば、同意は求められるべきではないという。
同氏は、スポンサーなしのADR(米国預託証券)やオプション、第三者が組成する仕組み商品が、すでにこの区別を反映していると指摘している。
トークン化には複数の方法がある。発行体が自社株をオンチェーンに置く、仲介者が原株の所有権をトークン化する、第三者が原株に裏付けられた別個の商品を発行する、の3つである。
ロビンフッドのストックトークンは3番目にあたる。テネフ氏によれば、原株1対1の裏付けを持つ独立した商品として発行され、発行体の資本構成表や株式に付随する権利を変えることなく経済的エクスポージャーを提供する。
つまり同氏が「同意不要」とする類型は、自社が採用している構造そのものだ。この構造を選んだ理由については、対象企業に個別の対応を求めずにグローバルに拡大するためだと説明している。
背景にAMCとの係争
この論考が出た背景には、進行中の対立がある。AMCエンターテインメント・ホールディングスのアダム・アロンCEOは9月3日、同社が承認していないAMC株トークンの取引停止をロビンフッドに要求した。
アロン氏は、190社を超える企業の株式トークンが発行体の関与や承認なしに提供されていると批判し、米証券法に基づく登録がない点も問題視。自主的に停止しなければ法的措置を検討し、証券取引委員会(SEC)にも懸念を伝えるとしていた。
ロビンフッドは要求を拒否した。SEC元委員で同社の最高法務・コンプライアンス責任者を務めるダン・ギャラガー氏はXで「弁護士を寄こせば、われわれが説明する」と応じている。
同種の摩擦は初めてではない。2025年7月にはOpenAI(オープンAI)が、自社名を冠したロビンフッドのトークンについて「我々の株式ではない」「提携も関与も是認もしていない」と表明していた。
テネフ氏は論考の結びで、1960年代後半の証券事務処理の混乱を引き合いに出す。当時の解決策が今日の仲介層を挟んだ所有構造を生んだとしたうえで、「オンチェーンに移ることが、オフチェーンでは持っていなかった拒否権を発行体に与えるべきではない」と述べた。


