暗号資産(仮想通貨)デリバティブ取引所BitMEX(ビットメックス)共同創業者で、投資ファンド・メルストロームの最高投資責任者(CIO)を務めるアーサー・ヘイズ氏は5日、新たなエッセイ「Situationship」を公開した。AIブームを金融の視点から読み解き、その帰結としてイーサリアム(
ETH)に強気の見方を示している。
本稿は同氏個人の見解であり、投資助言ではない。
「AIバブルは2008年型の信用ストーリー」
核心は、AIへの巨額投資(CAPEX)の捉え方にある。市場はこれを「テクノロジー」とみて高い成長倍率を与えているが、ヘイズ氏の見立ては違う。実態はデータセンターという「不動産」の開発だという。
データセンターは、性能がやがて陳腐化する半導体チップを収める箱にすぎない。ハイパースケーラーは実質的に大家であり、投資家にはそれをテック投資だと信じ込ませている、と同氏は指摘する。
だとすれば、AIバブルの性質も変わってくる。収益が伴わなかった2000年のドットコム型ではなく、金融機関の与信が焦げ付いた2008年型の「信用ストーリー」だ、というのが同氏の結論である。すでにAI関連への与信は膨らんでおり、破裂すれば収益の話ではなく信用危機として現れるとする。
減速局面は2027〜2028年と予想
投資は成長の「二次微分」で動く。これが同氏の投資観だ。
資産価格は成長が加速する局面でピークをつけ、減速局面では横ばいとなり、成長率がマイナスに転じて初めて下落する。AI CAPEXに当てはめると、公表ベースの伸びが減速し始めるのは2027年半ば〜後半、減速が誰の目にも明白になるのは2028年だと同氏はみる。それまでは強気相場が続き、まもなく最終局面に入るという。
過去の類似例として、米国のサブプライムローン危機と、1990年代半ばから2019年にかけての中国の不動産ブームを挙げた。採算の取れる案件が飽和した後も与信だけが膨らみ、資本の誤配分が積み上がった構図が共通するとする。
「危機を防ぐため政府は紙幣を刷る」
与信が焦げ付けば、政府は動く。ヘイズ氏はそう見る。
「国家安全保障」を名目とした救済に踏み切り、その紙幣印刷は2008年の世界金融危機後を超える規模になる、というのが同氏の予想だ。AI CAPEXへの与信規模がサブプライム危機を上回っているためだとする。
そこで生じた過剰な流動性が、暗号資産に流れ込む。この資本の誤配分こそがビットコイン(
BTC)の下値を固め、長期的な上昇の土台になると分析している。
もっとも、当面のビットコインは冴えないとみる。想定レンジは6万〜7万ドルで、下値は5万ドルもありうる。執筆時点で底値がついたかは分からないとしつつ、企業によるビットコイン売却をめぐる不安を市場が消化するには時間が要るとした。
イーサリアムの2026年末目標は5,000ドル
今回のエッセイで最も踏み込んだのが、イーサリアムだ。同氏はETHを「最も嫌われ、忘れられたメガキャップ」と呼ぶ。2021年に付けた過去最高値5,000ドルをいまだ回復できずにいる一方、時価総額上位の多くはすでに最高値を更新しており、その対比が際立つという。
根拠はトークン化の動きにある。ロビンフッドのような企業が、アービトラムなどイーサリアムのレイヤー2上に独自チェーンを築いており、イーサリアムはそれらを支える決済・清算層になると同氏はみる。仮に還元される手数料が全体のごく一部でも、トークン化を下支えする基盤としての価値は残る、という論理だ。
そのうえで同氏は、メルストロームがETHをロングしていると明かした。2026年末の目標は5,000ドル。執筆時点の約2.6倍にあたる。流動性が高く、大きなポジションでも数分で手仕舞える点も、この取引を選ぶ理由に挙げた。
ヘイズ氏はここ数カ月、オンチェーンでもETHの買い増しを続けていることが確認されている。今回のエッセイは、その保有の裏にある相場観を体系立てて示したものといえる。
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※本記事は特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。


