米証券取引委員会(SEC)のヘスター・パース委員が、2026年内にSECを退任する見通しだ。暗号資産業界で「クリプト・マム」の愛称で知られ、SECの暗号資産タスクフォースのリーダーも務める同氏は、YouTubeで公開されたインタビュー動画で、退任前に重視するデジタル資産規制の論点や退任後の予定について語っている。
退任前に示した規制方針と次世代育成への意欲
パース氏がインタビューで焦点として挙げたのが、デジタル資産分野で新しい仕組みをどのように試せるようにするかという点だ。その中で同氏は一定の条件下でオンチェーン金融の実験を認める「イノベーション免除」に触れた。
パース氏は、イノベーション免除を合成証券の取引に使う想定ではないと主張。むしろ、管理された環境でオンチェーン金融を試しながら、トークン化に伴う規制上の論点を見極めるものだと強調している。規制の外で自由に試すのではなく、監督可能な範囲で実用性を見極める姿勢を示した。
また、パース氏は公開市場をより使いやすくする必要性にも触れている。同氏は個人投資家の多くは公開市場を通じて成長企業にアクセスするため、より多くの企業が早い段階で上場できる環境づくりが重要だと述べた。過度な開示負担や株主訴訟リスクなどを見直す必要があるとの考えだ。
退任を前にした優先事項としては、トークンを使った資金調達やカストディ、振替代理人に関するルール、米商品先物取引委員会(CFTC)との連携などを挙げている。デジタル資産の規制を進めるうえでは、証券規制と商品規制の境界を整理することも課題だとした。
こうした規制整備を進めるうえで、パース氏は自己保管や金融取引のプライバシーを守ることも重要だと強調。悪意ある行為者への対応は必要だとしつつ、無実の人々のプライバシーを犠牲にすべきではないとの考えを示している。
なお、パース氏は退任後について、ロースクールで教鞭を執る予定であることを明かした。次世代の法律家と向き合い、金融市場や規制上の課題に取り組める人材の育成に関わりたいとの意向を示している。
パース氏の退任は、SECの暗号資産規制をめぐる議論に一定の節目をもたらす可能性がある。残りの期間で、トークン化や自己保管、金融プライバシーをめぐる議論がどこまで具体化するかが注目されそうだ。
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