中国の警察系大学である中国人民公安大学(PPSUC)の研究チームが、違法な暗号資産取引を約90%の精度で識別するAIの枠組みを開発したと、South China Morning Post(SCMP)が2日に報じた。研究自体は中国の査読付き学術誌『情報雑誌(Journal of Intelligence)』に2026年5月に掲載されている。暗号資産取引は急速に拡大する一方で、匿名性の高さから追跡が難しいとされてきた。
論文の責任著者で、犯罪捜査とサイバーセキュリティを専門とするSun Jingchao(スン・ジンチャオ)氏は、この研究が「違法な暗号資産取引を検出するための、正確で汎用的、かつ解釈可能な解決策を提供する」ものだと記している。
メモリーモジュールと大規模言語モデルを活用
この枠組みは、メモリーモジュールと大規模言語モデル(LLM)を組み合わせ、暗号資産取引が持つ匿名性と国境をまたぐ性質に対応する。こうした特性は、これまで資金洗浄などの違法行為の温床になり得ると指摘されてきた。
Sun氏は、この研究が「規制当局が違法な暗号資産取引や経済犯罪に対抗するための、革新的な技術的道筋を示す」ものだとも述べている。全体で約90%という精度は、研究チームが論文で示した数値だ。
中国当局は暗号資産関連の犯罪を警戒
研究を行った中国人民公安大学は、中国公安部の傘下にある国家警察大学だ。北京に拠点を置き、1948年に設立された。今回の成果は、当局が暗号資産に絡む金融犯罪への対応を強める中で公表された。
中国では2021年以降、暗号資産の取引やマイニングが原則として禁止されている。それでも暗号資産を用いた資金洗浄は後を絶たず、当局は取り締まりを強化してきた。最高人民検察院は今年3月、2025年に仮想通貨や地下銀行を用いた資金洗浄に関与したとして、3,259人を起訴したと報告している。
研究段階の枠組み、実務適用が焦点に
今回の枠組みは学術研究の段階にあり、論文で示された精度がそのまま実際の捜査で再現されるかは、今後の検証課題となる。研究チームは、匿名性の高い取引の中から違法な資金の流れを見つけ出し、規制当局による摘発に貢献する技術だと位置づけている。
暗号資産の匿名性は、利用者のプライバシーを守る一方で、犯罪捜査を難しくする側面がある。AIを使った取引分析の精度が上がれば、こうした資金の追跡は容易になる。同時に、規制と技術の関係やプライバシーとのバランスを巡る議論にも影響を与えそうだ。


