日本円ステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC株式会社は5日、シリーズBラウンドのエクステンション(拡張)を実施し、シリーズB累計で約60億円の資金調達を完了したと発表した。今回のラウンドには、物流大手のAZ-COM丸和ホールディングスが新たに出資参画した。
物流大手が出資、資本業務提携も
JPYCのシリーズBは、段階的に規模を広げてきた。2026年2月の1stクローズ以降、5月には累計約50億円で完了したと発表していた。今回はそのエクステンションとして、さらに上積みした形だ。
新たな引受先はAZ-COM丸和ホールディングス1社。同社はアマゾンの配送を担うデリバリープロバイダで、個人ドライバーを含む協力会社約2,300社を抱える物流大手だ。JPYCとは出資に加えて資本業務提携も結んでいる。
調達資金は、金融とweb3の両領域でのエコシステム拡大に充て、JPYCの社会実装を加速させるとしている。
骨太の方針が掲げた「オンチェーン金融」
物流企業との提携には、明確な狙いがある。
2026年7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)」では、「オンチェーン金融」の推進が示された。政府はこれを、ブロックチェーン上でステーブルコインなどによる資金決済が、商流・物流などのデータ管理とプログラムによって連動・一体化される金融、と定義している。
JPYCは、AZ-COMグループの物流網とJPYCを組み合わせることで、この「商流・物流・金流が一体化したオンチェーン金融」の基盤を担えると位置づけた。金融系の投資家ではなく物流大手が出資した点に、この戦略があらわれている。
両社の関係は、資本参加に先立って業務面で動いていた。AZ-COM丸和は協力会社約2,300社への委託費支払いにJPYCを導入する方針を示しており、今回の出資と資本業務提携はその延長線上にある。
実用局面が広がるJPYC
JPYCは、日本円と1対1で交換できる電子決済手段だ。裏付け資産は日本円(預貯金および国債)で保全される。JPYC社は2025年8月に資金移動業者の登録を得て、国内資金移動業者として初めて円建てステーブルコインを同年10月に発行した。発行チェーンはアバランチ、イーサリアム、ポリゴン、カイアの4つにのぼる。
足元では実用局面が広がっている。発行当初のクレジットカード払いやweb3ウォレット決済に加え、2026年に入ってからは実店舗決済の複数プロジェクトが動き出した。8月には、ローソンが店舗のPOSレジを使った決済の実証にJPYCを用いる。
JPYCは金融庁が7月に公表したマネー・ローンダリング対策の実証にも名を連ねており、規制と実務の両面で存在感を増している。
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