米暗号資産(仮想通貨)運用大手ビットワイズの最高投資責任者(CIO)マット・ホーガン氏は4日、市場構造法案「クラリティ法案」が今週中に成立しなかった場合の見通しを週次メモで公開した。同法案をめぐっては、審議期限が事実上目前に迫っている。
期限は8月5日、上院は7日から休会へ
米上院は8月7日から夏季休会に入り、9月14日まで審議を再開しない。上院規則上、休会前に採決するには8月5日までに討論打ち切り(クロージャー)を申請する必要があるが、8月3日時点で同法案は上院の本会議日程に載っていない。
クラリティ法案は米国で最も先行する暗号資産の市場構造法案で、SEC(米証券取引委員会)とCFTC(米商品先物取引委員会)の監督権限を切り分ける内容を含む。下院は2025年7月に294対134で可決したが、上院では60票のクロージャー要件に必要な民主党の賛成が集まっていない。
予測市場ポリマーケットでは、2026年内の成立確率が23%まで低下した。2月の82%から大きく落ち込んでいる。ホーガン氏はこれまで今週を「成立するか否かの分かれ目」と位置づけてきた。

ホーガン氏「否決されても法案は死なない」
ホーガン氏は、仮に今週成立しなくても最終決着にはならないとみている。法案は「歩く屍」のような状態に入り、9月の再審議や、12月のレームダック会期での予算関連法案への抱き合わせ通過といった観測が続くと予想した。
同氏はこれを悪い知らせだとする。クラリティ法案をめぐる不透明感が一部の機関投資家を市場の外にとどめており、法案の行方が定まらない限り、様子見の資金が戻りにくいという見立てだ。
むしろ成立確率が明確に下がれば、不確実性が解消されて秋の上昇につながる可能性があるとした。
「魔法は瓶には戻せない」
より重要な点として、ホーガン氏は法案の成否にかかわらず暗号資産業界は前進すると強調した。根拠として、SECのアトキンス委員長が7月のインタビューで、クラリティ法案と同じ論点に対応するルールを「出す用意がある」と述べたことを挙げている。
ただしトレードオフもあるとする。アトキンス氏のSECによるルールは短期的には議会の超党派法案より業界寄りになりうるが、将来の政権が非友好的な委員長を指名すれば覆されるリスクがあるという。
それでも同氏は、業界の勢いは強く、金融のオンチェーン化は止められないとみている。
具体例も並べた。ブラックロックで最も収益性の高いETFがビットコインETFであること、ナスダックやJPモルガンが資産のトークン化を加速していること。さらにビザ・マスターカード・ストライプがコインベースと組んでステーブルコイン基盤を立ち上げ、ロビンフッドが独自ブロックチェーンを公開した点も挙げた。
さらに、米通貨監督庁(OCC)がサークル、リップル、パクソスなどに信託免許を付与し、暗号資産が連邦銀行システムに組み込まれつつある点にも触れた。EUや日本、ロシアなど各国が暗号資産に前向きな法整備を急いでいるとも指摘している。
ホーガン氏は1994年の通信改革法案を引き合いに出した。当時、下院が423対4で可決した法案が上院で採決されずに廃案となったが、その2年間にネットスケープやアマゾン、イーベイが登場し、インターネットは待たずに成長したという。
議会は1996年に通信法を可決して追いつき、結果として2年の遅れが何かを鈍らせたとは言い難いと同氏は述べた。
そのうえで、ワシントンは常に大きな技術転換に遅れると指摘。今後数日の結果にかかわらず、暗号資産は数十年にわたり金融を作り変えるだけの勢いを持っていると結論づけた。
なお、本メモはホーガン氏個人の市場見解であり、投資助言ではない。


