金融庁は31日、令和9(2027)年度の税制改正要望を公表した。特定信託受益権、いわゆる信託型ステーブルコインについて、受益者が変わった際に必要となる税務書類の提出を不要とするよう求めている。
受託者が保有者を把握できない
現行制度では、信託の受託者に2種類の書類の提出義務がある。相続税法上は、信託の効力が生じた場合や受益者等が変更された場合に、受益者等の氏名や信託財産の価額等を記載した「信託に関する受益者別調書」を提出しなければならない。
所得税法上も、受益者等の氏名や信託財産に帰せられる収益・費用等を記載した「信託の計算書」等を税務署長へ出す必要がある。
この仕組みが、信託型ステーブルコインの実態と噛み合わない。
金融庁の資料によると、信託型ステーブルコインは法定通貨と価値が連動する決済手段として、不特定多数の利用者間を転々と流通し、頻繁かつ多数の取引に使われることが想定されている。このスキームでは、受託者が受益者の氏名やその変更を把握できない。受益者が保有によって収益を得ることも想定されていない。
資料に添えられた図では、信託銀行等が受託者、電子決済手段等取引業者が委託者かつ当初受益者となり、そこから利用者A、B、Cへとコインが移転していく流れが示されている。利用者Bの位置には「受託者は受益者情報の把握ができない」と赤枠で注記が付く。
要望では、受益者等の変更等があった場合の受益者別調書と信託の計算書について、提出を不要とするなど所要の措置を講じるよう求めている。
「金融イノベーション」はこの1件のみ
今回の要望は3つの分野で整理されている。「資産運用立国の推進」「子育て世帯への支援」「金融イノベーションの推進」だ。
信託型ステーブルコインの措置は3つ目に置かれ、この分野の主な要望項目としては唯一のものとなっている。
1つ目の分野にはNISAの利便性向上、金融所得課税の一体化、銀行等の投資専門子会社による中小企業への出資の特例が並ぶ。2つ目は生命保険料控除制度の拡充の恒久化だ。NISAについては、非課税保有限度額1,800万円を売却した年のうちに復活させる案などが継続要望として挙がっている。
そのほかの要望項目には、一定の外国発行の信託型ステーブルコインを電子決済手段として規定することに伴う所要の措置、改正金融商品取引法等の施行に伴う所要の措置も記載されている。
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