東証スタンダード上場のabc株式会社(8783)は28日、グループが保有する暗号資産(仮想通貨)をZoomART Foundationへ一括譲渡したと発表した。譲渡対価は総額2,000万円。対象資産の帳簿価額は64億5,400万円で、対価は簿価の0.31%にとどまる。
簿価64億円、8月24日時点の評価額は9億円
譲渡したのは同社と連結子会社abc CAPITALが持つ暗号資産12銘柄とNFT1件だ。適時開示によると、帳簿価額の合計は64億5,400万円、8月24日時点の評価額は9億5,900万円だった。
内訳で突出しているのがWOWBIT($WWB)である。1,514万6,940.16枚を保有し、帳簿価額は58億1,000万円。ところが8月24日時点の評価額は3億3,500万円で、簿価の5.8%まで沈んでいた。
次いで大きいのはZ2Coinの386万枚で、帳簿・評価額ともに5億5,700万円。Fighters Guild NFTが3,100万円で続く。
このほかNYANMARU Coin($NYAN)68億9,800万枚、Nyanmaru GOLD Utility Token($AGF)、ZMAT、USDT、CHCなども対象となった。HYPEが1.33枚、SOLが0.000042枚、TRUMPが5.24枚といった端数も譲渡に含まれている。
対価2,000万円は、8月24日時点の評価額と比べても2.09%にあたる。
価格の決め方について同社は、対象銘柄のなかに市場流動性が極めて低く公正な市場価格の把握が困難なものが含まれること、暗号資産関連事業からの完全撤退に伴い早期の一括売却が必要だったことを挙げた。第三者機関による評価や実質的な市場価値を勘案し、両社協議のうえ決定したと説明している。
2026年8月期4Qに64億円の売却損
譲渡に伴い、2026年8月期第4四半期に営業外費用として暗号資産売却損約64億3,000万円を計上する見込みだ。
あわせて特別利益も立つ。子会社abc CAPITALが寄付として受領し前受収益に計上していたミームコインについて、今回の譲渡により暗号資産受贈益2億2,900万円を計上する。差し引きでは約62億円の押し下げ要因となる。
同社は7月15日に2026年8月期の連結業績予想を「未定」へ修正しており、この状態は今も変わっていない。保有暗号資産の処分に伴う損益の確定額を見極めることが困難だったためで、今回の取引を含めた通期予想は算定が可能になった段階で公表するとしている。
譲渡対価はイーサリアム(ETH)で受け取り、受領後ただちに円へ換金する。同社は保有を継続する意図は一切ないと明記した。今回の譲渡に含めず市場で売却できる暗号資産(帳簿価額約2,000万円)も即時換金するため、8月末時点のグループの暗号資産残高は実質的にも形式的にもゼロになる見通しだ。
譲渡先はパナマの財団、同日に業務提携も
譲渡先のZoomART Foundationは、パナマ市に所在する2023年4月21日設立の財団だ。代表者はJulia Martinez氏、資本金は1万米ドル(約159万円)。アート作品を中心とした現物資産のトークン化・運営を手がけている。
大株主と持株比率、最近3年間の連結経営成績と財政状態は、いずれも「相手先の意向により非開示」とされた。
abcとの間に資本関係・人的関係はない。取引関係としては、2025年3月13日にabcの子会社がインセンティブトークン「ZMAT」を受領した経緯がある。
両社は同日付で業務提携も締結した。abcの不動産関連事業のノウハウと、ZoomARTのトークナイズ技術を組み合わせ、不動産を含む資産のRWA(現実資産)化とマーケットプレイス構築を進めるという内容だ。
ZMATを含むエコシステムとの連携強化、レベニューシェアによる収益基盤の構築も掲げている。同社はこの提携を通じ、今回計上する売却損失の早期回復を図るとしている。
取締役会での決議、業務提携および譲渡契約の締結、譲渡の実行は、いずれも8月28日付で行われた。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=158.97円)


