金融庁は2日、3月31日に開催した「金融行政モニター委員と金融庁幹部との意見交換会」の議事要旨を公表した。日本に拠点を持たない海外の無登録暗号資産(仮想通貨)事業者への対応や、暗号資産規制の金融商品取引法(金商法)移行などをめぐり、委員と幹部が意見を交わした内容が明らかになった。
無登録営業への対応、課徴金・差止命令も視野に
会合では、日本に拠点がない海外事業者が無登録営業などの違反を行っても、刑事訴訟の対象とならず訴追も没収も難しいとの問題意識が、金融行政モニター委員から示された。委員は海外事例を研究したうえで、海外事業者への裁判所による禁止・停止命令や課徴金、行政没収などの導入を「少なくとも検討すべきではないか」と提起した。
これに対し金融庁幹部は、域外適用は「非常に頭の痛い論点」だとし、特に暗号資産分野でどう実効性を担保するかが課題だと応じた。
そのうえで幹部は、暗号資産取引に係る規制を金商法へ移すことで無登録業者への対応が強化されるとの見方を示した。証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告や、裁判所への緊急差止命令の申立てが可能になるほか、IOSCO(証券監督者国際機構)が策定したEMMoUに基づく海外当局との調査協力が強まり、海外への執行面での助けになる側面があると説明している。
金商法移行後の「暗号資産の定義」、現行を引き継ぐ方針
暗号資産規制の根拠法が資金決済法から金商法へ移行するにあたり、暗号資産の定義をどう扱うかも論点に上がった。委員側は、現行の定義が決済手段としての利用を前提に整備されてきた点を指摘。暗号資産に該当しなければ金商法が適用されず、無登録業者規制などの実効性にも影響するため、該当性が問われる事例が増える可能性があるとして、移行後は定義を慎重に見極める必要があると述べた。
幹部側は、現行の定義は実務上一定程度機能しており、移行時の混乱を避ける観点から同一の定義を使用していると説明した。そのうえで、移行後の実務動向を注視し、投資者保護の観点で過不足がないか、法令適用の状況も見ながら必要に応じて検討する姿勢を示している。
ステーブルコイン、委員は再検討を提起も幹部は「現行制度で対応可能」
ステーブルコイン規制についても意見が交わされた。委員側は、日本が世界に先駆けて規制を導入した後、各国で制度整備が進む中で、日本の規制の基本構造との整合性を改めて確認すべきだと指摘した。
特に、資金移動業者がパーミッションレス型の分散台帳を用いてステーブルコインを発行する例について言及。発行を明確に念頭に置いた議論ではなかったとして、現行の資金移動業規制がそのリスクに見合っているか、国際的なルールの進展も踏まえて再検討する余地があるのではないか、との見方を示した。
これに対し幹部側は、資金決済法の2022年(令和4年)改正時点ではパーミッションレス型分散台帳を用いた発行は具体的に見られていなかったとしつつ、「法制的には将来的にも対応し得るよう設計されていると承知している」との認識を示した。米国などで信託受益権型が主流でない点は理解しているとしたうえで、諸外国の規制との整合性や状況を踏まえつつ、必要な制度設計を行っていく考えを述べている。
つまり、再検討の余地を提起したのは委員側で、幹部側は現行の法制度の延長線で対応できるとの立場を示した形だ。今回の議事要旨は、海外無登録事業者への対応や暗号資産規制の金商法移行に向けた論点を整理する内容となった。
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【訂正・追記】公開当初、ステーブルコイン規制について「パーミッションレス型発行も再検討対象」とする趣旨で記載していましたが、議事要旨の原文では、再検討の余地を提起したのは金融行政モニター委員側であり、金融庁幹部は「法制的には将来的にも対応し得るよう設計されている」として現行制度で対応可能との認識を示しています。委員と幹部の発言主体を明確にするため、該当箇所を修正しました。読者の皆さまにお詫びして訂正いたします。



