ベトナム政府は7月16日、暗号資産(仮想通貨)と暗号資産市場に関する行政違反の制裁を定めた政令284/2026/ND-CPを公布した。グエン・ヴァン・タン副首相が首相に代わって署名し、2026年9月1日から施行される。2025年11月に財務省が公表した草案が、正式な政令として成立した形だ。
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利用者罰金、草案から引き上げ
今回の政令で目を引くのは、事業者だけでなく利用者本人を制裁の対象に含めた点だ。第9条は、財政省が認可した暗号資産サービス提供組織を通さずに取引した国内投資家に、3,000万〜5,000万ドン(約19万〜31万円)の罰金を定めた。
この金額は、草案から引き上げられている。2025年11月に公表された草案では、個人投資家への罰金は1,000万〜3,000万ドンだった。正式版では下限が草案の上限と同じ3,000万ドンに、上限は5,000万ドンに上がった。パブリックコメントを経て、利用者への締め付けはむしろ強まった形だ。
さらに、外国投資家向けに募集・発行された暗号資産を国内投資家が取引した場合は、7,000万〜1億ドン(約43万〜62万円)とより重い。ベトナムの利用者はこれまで海外の取引所を日常的に使ってきたため、実務への影響は小さくない。
この設計は、同国が認可制でパイロット市場を囲い込む方針と重なる。ベトナムは2026年1月にデジタル技術産業法を施行して暗号資産を合法化し、財政省は2026年第3四半期の市場公式始動を予定している。認可を受けた事業者への移行を、利用者側の罰則で後押しする形だ。
無認可の運営・発行には最大2億ドン
事業者向けの罰則はより広く、重い。無認可で暗号資産サービスを提供したり、発行市場を運営したりした場合、1億8,000万〜2億ドン(約112万〜124万円)の罰金となる。無認可での暗号資産の広告・マーケティングも同額だ。組織への罰金上限は2億ドン、個人はその半分の1億ドンと定められている。
暗号資産の募集・発行に関する違反や、取引市場運営組織の違反は、いずれも7,000万〜2億ドンの幅で科される。サービス提供組織が顧客の資産を自社資産と分別管理していない場合や、投資家の本人確認を怠った場合も罰則の対象だ。
違反の内容によっては、罰金に加えてライセンスの一時剥奪、募集・発行や取引活動の停止(最長12カ月)、証拠物の没収といった付加的な制裁や、不法利得の返還などの是正措置が併科される。
最多の条文はマネロン・テロ資金対策
政令全体で最も条文量が多いのは、マネーロンダリング、テロ資金供与、大量破壊兵器拡散への資金供与の防止に関する第13条だ。罰金の幅は8,000万〜2億ドンに及ぶ。
顧客の本人確認やブラックリストの更新を怠る行為、リスク評価の未実施、疑わしい取引の未報告などが列挙されている。とりわけ、匿名口座や偽名口座を設定・維持する行為には1億6,000万〜1億8,000万ドン(約99万〜112万円)が科される。国際的なマネロン対策基準を強く意識した構成だ。
制裁の権限は、国家証券委員会(SSC)と国家銀行(SBV)の検査官、公安省の各部局長らに、職位に応じて配分される。電子環境での違反に対する制裁手続きも別途定められた。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドン=0.0062円)



