社名に「Bitcoin」を冠しながら、ビットコイン(BTC)を1枚も持たない。この矛盾めいた状況に、Bitcoin Japan株式会社(証券コード8105、旧堀田丸正)の代表取締役社長兼CEOフィリップ・ロード氏が3日、自らXで答えた。「なぜまだ持っていないのか。もっともな疑問だ」と切り出したうえで、保有ゼロは確信の欠如ではなく、むしろ規律の表れだと主張している。
「ナラティブには従わない」というCEOの弁明
ロード氏の論理は一貫している。1サトシを買う前に、ガバナンスやカストディ、監査、セキュリティといった基盤を固めるのが先だという。デジタル資産の保管で一度つまずけば、積み上げた価値は一瞬で消える。だからスピードより正確さを取った、という説明だ。
価格への言及も率直だった。ビットコインを「この世代で最も重要な価値保存手段の一つ」と評価しつつ、「優れた資産でも、誤った価格で買えば悪い投資になる」と釘を刺す。需給や市場構造を見極め、好機を待つ忍耐こそ戦略だという立場だ。
最も踏み込んだのが、資金調達への姿勢である。多くの企業がビットコイン・トレジャリー戦略で株式を発行し、調達資金でBTCを買い増している。ロード氏はそうした手法に敬意を払いながらも、「ビットコインを買うためだけに株式を発行することはしない」と明確に線を引いた。受託者の仕事はどんな価格でもBTCを買うことではなく、1株当たりの価値を高めることだ、という理屈だ。
掲げた看板と、保有ゼロの現実
もっとも、この弁明が出てくる背景には、同社が置かれた事情がある。堀田丸正は2025年9月にビットコイン事業への参入と商号変更を発表し、11月にはマッコーリー・バンクを割当先とする新株予約権を発行した。その開示では、調達資金の使途にビットコイン保有資金988百万円を明記している。買う前提で資金まで用意していた、ということだ。
それでも保有はゼロのまま推移した。さらに同社は4月1日付で東証スタンダードの監理銘柄(確認中)に指定され、上場維持を巡る不安も抱える。社名と実態の乖離、資金使途と保有実績のずれ、そして上場リスク。今回のCEO投稿は、こうして積み上がった市場の疑問に正面から向き合うものだった。
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視線の先はAIインフラ、そして「いつ買うか」
興味深いのは、ロード氏がビットコイン一辺倒ではない点だ。投稿では、AIインフラやデータプラットフォーム、コンピュートとエネルギー、デジタル金融インフラ、さらにはレアアースまでを「並外れた機会」として列挙し、「AIとビットコインの経済をリードする企業を目指す」と掲げた。BTCはあくまで選択肢の一つ、という構図がにじむ。
この姿勢は言葉だけではない。同社は5月27日、米完全子会社BTCJPN US LLCを通じてスペースX(Space Exploration Technologies)へ投資したと開示している。投資は米国登録のジェネラルパートナーが設立した特別目的事業体(SPV)への出資という形で、プライベートのセカンダリー市場を通じて実行された。投資額は公表していない。
ロード氏はこの投資について、スペースXが打ち上げ事業とスターリンク通信網でグローバルなインフラ資産を築いている点を挙げ、AIインフラやデータ接続をめぐる構造的トレンドを捉える長期戦略に合致すると説明した。ビットコインは持たずとも、デジタルインフラ領域では既に資本を投じている格好だ。
なお同社は、スペースXが未公開企業であり、将来の流動性やバリュエーション、投資リターンは保証できないとも付記している。
もっとも、スペースXは6月12日にナスダックへの上場(ティッカー:SPCX)を予定している。5月20日にはSEC提出の目論見書が公開されており、Bitcoin Japanの投資は、この上場発表後、上場を目前に控えたタイミングで実行されたことになる。
上場時の評価額は1兆7,500億ドルから2兆ドル、調達額は750億〜800億ドル規模とされ、2019年のサウジアラムコを上回る史上最大のIPOとして注目を集めている。リリース上の「未公開企業」という記載は5月27日時点のものだが、実態としては上場直前の投資だった。
そのうえで同氏は、保有は時間の問題だと締めくくった。「問いは『やるかどうか』ではなく、常に『いつか』だった」。資本を守り、規律を保ち、勝算のある局面で決然と動く——。「時に最も難しい取引は、待つことだ」という一文に、買わないことを選び続けるCEOの姿勢が表れている。市場がこの弁明を規律と見るか、それとも踏み切れない言い訳と見るかは、実際にBTCを取得するその日まで分からない。
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