物流大手のAZ-COM丸和ホールディングスが、個人のトラック運転手など協力会社約2300社への委託費などの支払いで、円建てステーブルコイン「JPYC」を導入する方針であることが分かった。日本経済新聞が19日に報じた。JPYCの大規模な法人利用は国内で初となる見込みだ。
銀行振込手数料がかからない・即時着金で取引先を支援
同社はアマゾンジャパンの配送などを包括受託する3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)を手掛けている。今回の取り組みでは、運送を担う個人事業主への委託費や給与支払いに「JPYC」を活用する。発行元のJPYC社とは業務提携に加え、10億円超の出資も検討中としている。
ステーブルコインは法定通貨と価値が連動するように設計されている。そのため一般的な暗号資産(仮想通貨)特有の激しい価格変動がなく、実体経済での報酬支払いに適している。さらに、従来の銀行システムと異なり、24時間365日の迅速な決済が可能で、送金にかかるコストも大幅に抑えられる点が強みだ。
この強みを生かして報酬の振り込み頻度を増やし、支払いサイクルを従来よりも大幅に短縮する。これにより、日々の資金繰りに課題を抱えやすい小規模な運送会社や個人ドライバーを財務面から支援することが、今回の主な狙いとされている。
現在の国内物流業界は、運転手の高齢化や残業規制の強化に伴ういわゆる「物流2024年問題」により、人手不足が深刻化している。ブロックチェーン技術を用いた迅速な支払い環境の提供は、同社と契約を結ぶメリットとして打ち出される見込みだ。
BtoB決済への波及とグローバルな動向
これまで暗号資産は投資目的での取引が主流だったが、今回の事例は実社会を支える企業間決済への応用を示すものだ。価格が安定している特性を生かし、金融領域にとどまらない実用的な決済インフラとして利用の裾野が広がりつつある状況だ。
グローバル市場に目を向けると、米国ではすでに法人の事業活動に暗号資産決済を組み込む動きが進んでいる。決済大手の米ストライプが、2025年に企業向けのステーブルコイン受け取りプラットフォームの提供を開始した事例などがそれに該当する。さらに、暗号資産取引所大手の米コインベース・グローバルも、オンライン通販サイト向けに特化した独自の決済システムの提供を始めている。
物流2024年問題で人手不足が深刻化する中、下請け事業者の資金繰り改善は喫緊の課題だ。ステーブルコインによる即時決済は、ドライバー確保に向けた強力なインセンティブとなる。大手が率先してWeb3技術を社会課題の解決に適用した本件は、物流業界全体のDXを加速させる画期的な事例と評価できる。
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