ブロックチェーン間の相互運用を実現するエコシステム「コスモス」共同創業者のイーサン・ブックマン氏が率いるスタートアップ「Cycles(サイクルズ)」は21日、ブロックチェンジ・ベンチャーズ主導のラウンドで640万ドル(約1億円)を調達したと発表した。コインベース・ベンチャーズ、コンパウンドVC、プリミティブ・ベンチャーズも参加しており、累計調達額は870万ドルとなる。
暗号資産市場に「清算」インフラを持ち込む
サイクルズが解決しようとしているのは、暗号資産(仮想通貨)市場にクリアリング(清算)インフラがほぼ存在しないという構造的な問題だ。伝統的な金融市場では、複数の取引先間の債務を相殺(ネッティング)し、差額だけを決済することで資金効率を高めている。
しかし暗号資産市場では取引の多くが「グロス」(総額)ベースで行われており、参加者は取引ごとに全額を事前に用意しなければならない。この非効率がどれほど深刻かを示したのが2025年10月の出来事だ。わずか1日で190億ドル超のレバレッジが清算され、そのうち70%はたった40分間に集中した。
ブックマンCEOは「クリアリングは歴史的に大手金融機関だけが使える金融の超能力だった。中央集権的な仲介者なしに、その超能力をすべての人に届けることが目標だ」と述べている。
機関向け「プライム」と個人向け「ペイ」の二本立て
サイクルズは共通のクリアリングエンジンの上に2つのプロダクトを構築している。機関投資家向けの「サイクルズ・プライム」は、OTC取引の債務をネットワーク上でプライベートにネッティングし、担保や資産移動なしにカウンターパーティーリスクを軽減する仕組みだ。
FalconX(ファルコンエックス)とLynq(リンク)がアンカーパートナーとしてパイロットに参加している。ファルコンエックスのレポー氏は「レガシーな決済インフラは24時間365日のグローバル市場向けに作られていない」とコメントした。
もう一つの「サイクルズ・ペイ」は個人・企業向けのステーブルコイン決済アプリだ。支払いをクリアリングエンジン経由でルーティングし、参加者間の債務をネッティングすることで実際に動かす資金を最小化する。
技術面では、ゼロ知識証明(ZKP)とトラステッド実行環境(TEE)を組み合わせ、取引のプライバシーを保ちながらネット決済を実現する。サイクルズはコスモスのインフラを手がけたインフォーマル・システムズからのスピンアウト企業で、「チェーン間の接続」から「金融の決済効率」へと挑戦の領域を広げた格好だ。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=159円)



