ナスダック上場企業パーペチュアルズ・ドットコム(Perpetuals.com、PDC)は19日、ユーザーが自己資金を一切リスクにさらさずに取引利益を得られるAI搭載プラットフォーム「アップサイドオンリー」をローンチしたとブルームバーグが報じた。同社CEOのパトリック・グリューン氏は、破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの欧州法人で責任者を務めた経歴を持つ。
ユーザーは損失ゼロ、利益の50%を受け取る仕組み
アップサイドオンリーの仕組みはこうだ。ユーザーは原油・金・株式・暗号資産などの資産について、シミュレーション上で価格予測を提出する。同社の独自AIモデル「ベイズシールドAI」がその中から利益を生む可能性の高い戦略を選別し、パーペチュアルズが自社資金で実際の取引を執行する。取引が成功すれば利益の50%がシグナル提供者に還元され、損失が出た場合はすべてパーペチュアルズ側が負担する。
つまりユーザーは資金ではなく、時間と知見をAIの訓練に提供する構造だ。グリューン氏はブルームバーグに対し「リテールトレーダーは金融商品の分析には長けているが、執行が苦手だ。人間の知恵とAIを組み合わせるのが狙い」と語った。
ベイズシールドAIは220億件超の取引データで訓練済みで、市場そのものを予測するのではなく、個々のトレーダーの取引結果を予測する設計だという。グリューン氏は「AIで市場を予測することは不可能だと確信している。だが、人間の取引がどうなるかを予測することは可能だ。過去の実績があるからだ」と述べた。
FTX崩壊の経験が設計思想に
グリューン氏はスイスのデジタルアセッツAGの共同創業者で、2021年にFTX創業者サム・バンクマン=フリード氏に同社を売却し、FTXヨーロッパの責任者に就任した。翌2022年のFTX破綻後、法的手続きを経て欧州法人の資産を約3,300万ドル(約52億円)で買い戻し、パーペチュアルズの基盤とした。
同氏は「FTXでは異なる設計にすることもできた。だが、二度とああいうことはしたくないと決めた」とブルームバーグに語り、ユーザーが資金の管理権を手放さずに利益を得られるプラットフォーム設計にFTXでの経験が反映されていることを強調した。パーペチュアルズの取引プールにはグリューン氏自身が1億ドル(約159億円)を投入済みで、さらに数億ドル規模の資金調達に向けた交渉も進めているという。
ただし、この「ノーロス(損失なし)」モデルに対しては懐疑的な見方もある。損失を負わないのはあくまでユーザー側であり、すべての損失ポジションを吸収するパーペチュアルズの時価総額は約2,200万ドル(約35億円)にとどまり、直近の業績も赤字が続いている。モデルの持続可能性は今後の運用実績にかかっている。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=159.06円)



