BIS(国際決済銀行)の金融安定研究所(FSI)は4月23日、大手暗号資産(仮想通貨)取引所が取引や保管にとどまらず、銀行やプライムブローカーが担ってきた金融仲介機能に近い業務を手がけているとする論文を公表した。顧客から預かった暗号資産を貸付やマーケットメイクの資金として運用し、信用・流動性・満期リスクを抱えているにもかかわらず、多くの国・地域で健全性規制が及んでいないと指摘している。
顧客資産を原資にする暗号資産業者の構造とリスク
特に問題視されているのは、大手暗号資産取引所が顧客から受け入れた暗号資産を貸付やマーケットメイクなどに振り向けている点である。これは銀行が預金を原資に与信を行う仕組みに近く、業者側に信用リスク、流動性リスク、資金調達と運用の期間がずれる満期ミスマッチを生じさせていると分析した。顧客にとっては利回りを得る商品であっても、業者側ではバランスシート上のリスクの変換を伴う点が論点である。
論文はこうした業者をMCI(多機能暗号資産仲介機関)と位置づけ、取引、保管、利回り提供、貸付、マーケットメイク、デリバティブ、トークン発行までを単一の事業者が担っている実態を整理した。具体的にはバイナンス、コインベース、バイビット、Crypto.com、MEXC、OKXなどが分析対象として取り上げられている。これらの業務範囲は、伝統的な銀行やプライムブローカーが担ってきた金融仲介機能と広く重なるという。複数の業務を単一の事業者に束ねることで、リスクの集中が生じやすいとしている。
一方で、こうした業務には多くの国・地域で健全性規制が適用されていない。預金保険や中央銀行の流動性供給に類するセーフティネットがなく、顧客保護の面で脆弱性が残ると指摘した。銀行などに課されてきた規制上の安全装置が、同様のリスクを抱えるMCIには及んでいない点を論文は問題視している。
論文では今後の対応の方向性として、資本や流動性の整備、ガバナンスとリスク管理体制の強化、ストレステストの導入を挙げている。併せて、事業者単位の規制と業務単位の規制を組み合わせるアプローチにより、MCIが抱えるリスクと既存規制の隙間を埋めていく必要があるとしている。
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