ステーブルコイン最大手テザー(USDT)は10日、ドイツのロボット企業Neura Robotics(ニューラ・ロボティクス)への最大14億ドル(約2,247億円)のシリーズC調達を主導すると発表した。ヒューマノイド(人型)ロボティクスで過去最大級の民間投資ラウンドの一つとなる。
テザーにとって、単なる資金提供にとどまらない一手だ。同社は出資に加え、自社の中核技術であるウォレット機能とエッジAIを、ニューラのロボットに組み込む。
ロボットに「自己管理型ウォレット」を組み込む
ニューラ・ロボティクスは2019年設立、ドイツ・メッツィンゲンに本社を置く認知ロボティクス企業だ。人型ロボットや精密ロボットアーム、自律移動ロボット、サービスロボットなど、人間と機械が協働するあらゆる現場で動くロボットを開発している。
今回の提携の核心は、テザーが開発するオープンソースの「ウォレット・デベロップメント・キット(WDK)」を、ニューラのロボットに直接組み込む点にある。WDKは、自己管理型(セルフカストディ)のウォレット機能をロボットに持たせる仕組みだ。
これにより、ロボットは完了したタスクの報酬をマイクロペイメントとして受け取り、ほかのシステムと取引し、人間に代わって経済的な行動を、あらかじめ定められた範囲内で実行できるようになる。決済が人間の管理する別工程ではなく、ロボットの作業の流れそのものに組み込まれる、とテザーは説明する。
あわせて、テザーのエッジAIランタイム「QVAC」もニューラの環境で活用される。AIモデルをクラウドに頼らずロボット本体で動かすことで、遅延を減らし、特定の大規模計算事業者への依存も抑える狙いがある。
テザーが描く「機械経済」
テザーCEOのパオロ・アルドイノ氏は「ロボティクスがスクリプト化された自動化を超え、真の自律へ向かうなか、背後のインフラも進化が必要だ」と述べた。
自律機械は情報をローカルで処理し、判断し、中央集権的な仲介者に頼らず取引する能力を必要とするとし、QVACがエッジの知能を、WDKが安全な金融レイヤーを担うと説明した。
ニューラ創業者兼CEOのダビド・レーガー氏も「知的機械が自律的に学習・行動するだけでなく、協調し、取引し、価値を創造する未来を見ている。次の経済、すなわち機械経済のインフラ構築に向けた重要な一歩だ」とコメントした。
テザーは、数千億ドルを国境を越えて動かすステーブルコインの金融レールを築いてきた。今回の出資は、その実績を物理世界で動く機械へと広げ、ロボティクス・エッジAI・組み込み金融が融合する領域へ踏み込むものだ。
AIエージェントやロボットが自ら決済を行う流れは、メタマスクやマスターカードなど他社も相次いで参入しており、業界全体の潮流となりつつある。
関連:テザーCEO「15年以内にAIエージェントがビットコインとUSDTで自律的取引へ」
関連:テザー、自社仮想通貨ウォレット公開──メアドで送金、ガス代不要
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=160.5円)



