米下院歳入委員会は9日、暗号資産(仮想通貨)を含むデジタル資産の課税ルールを整備する法案を審議する公聴会を開いた。先立って公表された法案群は、少額取引の報告負担やマイニング・ステーキング報酬の扱いをはじめ、寄付や貸付、会計処理、過去の申告不備への対応など幅広い税務論点を対象としている。
急速な暗号資産普及を受け、税務実務の見直し進む
今回の法案には、10ドル以下のネットワーク手数料について処分損益を認識しない案や、規制対象の米ドルステーブルコインの損益計算を簡素化する案が盛り込まれた。日常利用で発生する細かな税務処理を減らし、納税者と当局の双方の負担を抑える狙いがある。
法案群は税務負担の軽減だけでなく、租税回避への対応も視野に入れている。過去の申告不備を自発的に是正する制度やウォッシュセール、仮装売買といった乱用防止ルールの適用も盛り込まれた。
法案の背景にあるのは、暗号資産の急速な普及に税制の整備が追いついていないという問題意識だ。ジェイソン・スミス委員長は冒頭陳述で、米国で6,700万人以上が暗号資産を保有し、市場規模は2兆ドル(約320兆円)を超えていると説明。現行制度の過度な報告義務がデジタル資産の実用性を妨げていると強調した。
業界側は税制明確化を要望する一方、専門家はデジタル資産優遇リスクを警戒
公聴会では民間企業や政策団体の関係者も冒頭陳述を行い、それぞれの立場から意見を述べている。
フィデリティ・インベストメンツのサラ・ライリー氏は、既存の税法がデジタル資産の普及前に作られたものであり、現在のガイドラインは不十分だと証言。税制の不確実性は納税者の信頼を損ない、イノベーションやインフラの国外流出を招く恐れがあると述べた。
また、コインベースのローレンス・ズラトキン氏は、税制が明確であれば人々は遵守し、不明確であればコストが増え、経済活動は他へ移ると主張した。米ドルステーブルコインの取引ごとに損益計算を求めることは税収面の利点が乏しい一方で、事務負担が大きいと指摘している。
一方、NYU法法人税センターのマイク・カーチャー氏は、マイニングやステーキング報酬の課税繰延について、デジタル資産に事実上の税制優遇を与える恐れがあると警告した。所得は受領時に課税する方が管理しやすいとし、分散型金融(DeFi)の透明性不足が脱税や不正金融のリスクを残すとも指摘した。
今回の審議は、米国がデジタル資産分野の競争力を維持するための税制整備である一方、過度な優遇や租税回避を防ぐ制度設計も問われる。法案群はまだ審議段階にあるが、今後は負担軽減と公平課税のバランスをめぐる調整が焦点となりそうだ。
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