ビットコイントレジャリー企業最大手のストラテジー(MSTR)は29日、保有するビットコインの長期運用と株主還元の両立を目指す新たな資本管理枠組みを発表した。これまでビットコインを売却しない姿勢を貫いてきた同社だが、今後は配当支払いや自社株買い戻しのために、保有するビットコインを売却する可能性を明記した。
「絶対に売らない」姿勢からの大転換、配当・自社株買いの原資に
今回発表された枠組みは、STRCやSTRKなど同社が発行する一連の優先株(総称してデジタルクレジット証券)の強化や流動性向上を目的としている。長期的な株主価値の創出を目指すための新施策であり、多角的な資金管理を実現するため5つの具体的なプログラムや方針から構成されている。
1つ目は「米ドル準備金方針」の策定だ。配当や利払いを確実に行うため、同社は現在約25.5億ドル(約4,126億円)の準備金を確保しており、これは予想される年間支払額の約17.4ヶ月分に相当する。今後は最低でも12ヶ月分の準備金を常時維持するルールを設ける。
2つ目の施策として、「STRC配当方針の改定」である。7月1日以降を基準日とする同証券の年間配当率を12.00%に引き上げる。市場取引価格を規定額である100ドル付近で安定させ、投資家からの信頼と市場での流動性を向上させる狙いがある。
3つ目は最大10億ドル(約1,619億円)規模となる「デジタルクレジット証券の買い戻しプログラム」だ。STRCをはじめとする同社の優先株を、市場状況に応じて機動的に買い戻す。これにより将来的な配当負担を大きく減らしながら、企業としての信用力強化を図る。
4つ目として、優先株とは別に最大10億ドル(約1,619億円)規模となる「クラスA普通株の買い戻しプログラム」も設定された。経営陣が自社の株価を本質的価値よりも割安だと判断した際に、市場から買い戻しを実施し、普通株主にとっての長期的な価値向上を積極的に目指していく構えだ。
5つ目がこれら施策の資金源にもなる「ビットコイン収益化プログラム」である。同社が随時ビットコインを売却し、米ドル準備金の補填として最大12.5億ドル(約2,023億円)を調達する枠に加え、配当金の支払いや各種証券の買い戻し資金に充てるための売却権限を与える施策となっている。
この最大12.5億ドル規模のビットコイン売却枠は、前述した約25.5億ドルの米ドル準備金と組み合わせることで真価を発揮するという。これらを合算すると配当や利払いに向けた流動性は約38億ドル(約6,148億円)に達し、予想年間支払額の約25.9ヶ月分を維持できる強固な財務体制になるとしている。
一連の方針転換について、創業者兼会長のマイケル・セイラー氏は「ビットコインを主要な財務準備資産とする方針に変わりはない」と強調している。規律ある流動性の確保と積極的な資本管理を通じ、長期的なビットコイン保有方針を維持しながら、株主還元を両立させる意図だとしている。
徹底した長期保有姿勢で知られた同社が、ビットコイン売却の選択肢を明言したことは市場に驚きを与え得る。しかし、これは単なる方針転換ではなく、保有する暗号資産を配当原資や流動性として動的に活用する、より成熟した企業財務戦略への移行プロセスであると捉えることができる。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=161.8円)



