イーサリアムの機関投資家向け導入を推進するEtherealize(イーサライズ)は4月、調査レポート「Ethereum and the Era of Productive Money」を公開し、ETH
ETHの長期価格目標を25万ドル(約4,000万円)に設定した。ヴィタリック・ブテリン氏やイーサリアム財団からの助成金で設立され、エレクトリック・キャピタルとパラダイム主導で4,000万ドルを調達した同社は、ETHを「人類史上初の生産的貨幣(Productive Money)」と位置付けている。
「金もビットコインも複利で増えない」──バフェットの批判をETHが克服
レポートの出発点は、ウォーレン・バフェット氏が2011年の株主書簡で述べた金への批判だ。「金は1オンスを永遠に持っていても、1オンスのまま増えることはない」──同じことがビットコイン
BTCにも当てはまるとレポートは指摘する。希少性だけでは経済的に「不毛」であり、保有するだけでは増えない。
ETHはこの制約を打破する。ステーキングによりプロトコルの合意形成に参加すれば、貸出や信用リスクを伴わずに年2〜4%のリターンを得られる。借り手も銀行も存在せず、リスクはアルゴリズムで制御されるプロトコルリスクのみだ。バフェットの批判が金とBTCに該当し、ETHには該当しないという構図がレポート全体を貫いている。
25万ドルの根拠──金+BTCのマネタリープレミアム31兆ドル
価格目標の計算は明快である。金のマネタリープレミアムを時価総額の90%(工業・装飾用途を除く)として約29.7兆ドル、ビットコインの時価総額全額を約1.5兆ドルとし、合計約31兆ドルをETHの流通量約1.21億枚で割ると、1ETHあたり約25万ドルとなる。レポート執筆時点でのETH価格は約2,400ドルであり、現在価格との乖離は約100倍に上る。
段階的なマイルストーンとしては、BTCパリティ(BTCの時価総額と同等)で約14,711ドル、ゴールドパリティで約249,744ドル、両者の合算で約262,077ドルが示されている。
レポートは経済学者カール・メンガーの貨幣論を引用し、ETHを金・BTCと9つの属性で比較した。希少性(発行上限1.5%+バーン機構)、代替可能性(ZKプライバシープール開発中)、分割性(18桁)、携帯性(秒単位で全世界に送金可能)、耐久性(PoSはネットワーク価値に比例してセキュリティが強化)、検証可能性(オンチェーンで完全監査可能)、検閲耐性(強制包含メカニズム)、保有コスト(ステーキングにより実質マイナス)、そして生産性(年2〜4%の複利)の各項目で、ETHは「歴史の長さ」を除くすべてで金・BTCと同等以上と結論付けている。
ビットコインの構造的弱点──セキュリティ予算の縮小リスク
レポートはビットコインに対する批判的な分析も含んでいる。ブロック報酬が4年ごとに半減する設計上、セキュリティ予算が長期的に縮小する点を構造的弱点として挙げた。マイニングハードウェアの全置換コストは約63億ドルと試算しており、大手テクノロジー企業が1四半期に費やすコンピューティング投資を下回る規模だと指摘する。一方、イーサリアムのPoSモデルでは、攻撃に必要なコストがステーキングされたETHの価値に比例して増大するため、ネットワーク価値の成長とともにセキュリティも強化される設計となっている。
さらにレポートは、1870年代の銀の脱貨幣化を歴史的アナロジーとして用いている。銀は金に対する劣位貨幣として徐々にマネタリープレミアムを失い、金銀比率は1:15から1:80に崩壊した。銀本位制を維持した中国は購買力の80%以上を喪失し、最終的にハイパーインフレに至った事例を引き合いに出し、「劣位貨幣にとどまるコストは、優位貨幣の採用が進むほど増大する」と論じている。
レポートの位置付けと留意点
イーサライズはイーサリアムエコシステムの推進を使命とする企業であり、レポートには「イーサライズ及び関連者は議論されている資産のポジションを保有している可能性がある」と明記されている。共同創業者のDanny Ryan氏はイーサリアム財団の元研究責任者、CEOのVivek Raman氏は元ウォール街トレーダーという経歴を持ち、レポートの論調はETHに対して強い強気バイアスを含んでいる点は差し引いて読む必要がある。主要なリスクとして、規制(各国政府によるDeFi制限)、競争(より優れたスマートコントラクトプラットフォームの出現)、技術(プロトコルの重大バグ)の3点が挙げられている。
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