南アフリカの経済学者ダービー・ルート氏は21日、ビズニュースが公開したYouTube動画の中で、同国財務省が進める暗号資産(仮想通貨)規制について懸念を示した。技術の本質を理解しないまま規制を強化すれば、経済活動や決済分野の発展をかえって阻害しかねないとの見方だ。
遮断困難な暗号資産、ステーブルコインは決済改善の手段に
ルート氏は、暗号資産は単なる通貨ではなく、インターネットを介して移転可能な「情報」だと説明した。南アフリカには国外への資金移動を管理する外国為替規制が存在するが、銀行を経由せず移動できる暗号資産を政府が完全に遮断するのは「不可能」だという。
具体例として挙げたのが、暗号資産をオフラインで保管するコールドウォレットだ。利用者が復元用のパスワードを記憶していれば、政府による資産の差し押さえは極めて困難になる。こうした技術的な特性を踏まえずに、暗号資産を従来の資金移動と同列に扱おうとする財務省の姿勢は現実的ではないと同氏は批判した。
また、ルート氏は暗号資産を犯罪やマネーロンダリングの手段としてのみ捉える見方にも否定的だ。特にステーブルコインは既存の決済手段より低コストで送金や支払いが可能なため、アフリカの小売決済を底上げする存在になり得ると同氏は説明している。
低コスト決済が既存金融を脅かす、規制強化には税収懸念も
一方で、ステーブルコインの普及は既存の金融機関にとって脅威となり得る。ルート氏によれば、利用者が銀行預金からステーブルコインへ資金を移す動きが広がれば、銀行は預金減少に伴う資金調達コストの上昇に直面するという。より安価な決済手段が浸透すれば、クレジットカード会社の収益構造にも影響が及ぶとした。
そのうえで、政府が暗号資産規制を強める背景には、犯罪対策だけでなく税収流出への警戒もあるとの見方を示している。マネーロンダリング対策に伴う過度なコンプライアンス負担は、正規の事業者や経済全体をかえって圧迫する結果になると同氏は指摘した。
ルート氏はさらに、国営企業や地方自治体の機能低下が進むなかで、市民や企業が政府に頼らず事業や生活基盤を自ら築き始めている現状にも言及。暗号資産を力ずくで抑え込もうとする規制は、国家の管理力を回復するどころか、新たな決済手段の発展や民間の自立を阻むことになりかねないと警鐘を鳴らした。
ルート氏の主張は、規制の設計次第で技術が味方にも障壁にもなり得るという警告だ。南アフリカ財務省が今後どのような方針を示すか、引き続き注目したい。
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