ロシア「モスクワ証券取引所」、ビットコイン先物の提供を開始

JinaCoin編集部
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適格投資家限定、米ドル建て価格・ルーブル決済

ロシア最大の証券取引所「モスクワ証券取引所(MOEX)」は、ビットコイン価格に連動する新たな金融商品として「Bitcoin Trust ETF」に基づく先物取引を開始した。タス通信が6月4日に報じた。

今回導入された先物取引は「IBIT」というティッカーシンボルで提供され、価格は米ドルで表示される一方、決済はロシアルーブルで行われる。契約は四半期ごとのもので、初回の満期は2025年9月に設定されている。

この新商品は、ロシア中央銀行が2024年5月に発表した規制方針に基づくものである。方針では、適格投資家に限定して、仮想通貨の価値に連動したデリバティブ、証券、デジタル金融資産の提供が認められることになった。これにより、仮想通貨そのものを直接保有せずとも、その価格変動から利益を狙うことが可能となる。

ロシア国内では他の金融機関も同様の動きを見せている。第2の証券取引所であるサンクトペテルブルク取引所は、仮想通貨連動型の現金決済先物取引の試験運用を開始した。また、ロシア最大の銀行であるズベルバンクも、仮想通貨を直接保有せずに投資できる新商品を開発中であるとされる。

もっとも、ロシア中央銀行は依然として仮想通貨の直接保有には慎重な立場を取っており、金融機関およびその顧客に対しても直接投資は控えるよう呼びかけている。そのため、今回のような先物取引やETFなど、リスク管理が可能な金融商品による間接的な投資が現実的な選択肢として浮上している。

今回の先物取引導入の背景には、ウクライナ侵攻後に強化された西側諸国による経済制裁がある。ロシアは国際決済ネットワークから大きく切り離され、従来の金融インフラを通じた資金移動が困難になっている。そうした状況下で、仮想通貨は国際金融市場との接点を維持するための重要なツールとして注目されてきた。

とはいえ、ロシア当局としてはボラティリティの高い仮想通貨をそのまま国内市場に流通させることには消極的である。そのため、今回導入されたIBIT先物のように、価格は米ドル建てであるものの、実際の決済はロシアルーブルで行うことで、為替管理と国内通貨の流動性確保も両立しようとする狙いが見られる。

投資家にとっては、仮想通貨の直接保有を避けながらも、その価格変動から利益を得る可能性がある点で注目に値する。ただし、地政学的リスクや規制の変更が市場に与える影響は依然大きく、慎重な投資判断が求められる局面であることに変わりはない。

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