米資産運用大手フランクリン・テンプルトンでデジタル資産部門を統括するサンディ・カウル氏は、AIエージェントがもたらす成長機会を捉えるには、株式に加えて暗号資産(仮想通貨)とアルトコインへの投資が必要になるとの見解を示した。同社が7月21日にXで投稿した論考で述べている。
エージェント型AIが生む「機械同士の決済」
カウル氏はまず、AIの役割が変わりつつあると整理する。2010年代の機械学習は人間の作業を補助する道具であり、2020年代初頭の生成AIは共同制作者になった。次に来るエージェント型AIは、環境を認識して計画を立て、人間の監督なしに多段階のタスクを実行する自律システムだという。
この変化は、AIが担う仕事の性質を変える。生成AIが情報収集と文章作成に長けていたのに対し、エージェントは取引そのものを引き受けるようになる。カウル氏が引用した推計では、エージェントによる商取引は2030年までに3兆〜5兆ドル(約489兆〜815兆円)規模に達する。
企業向けソフトウェアの内部では、計算資源やAPI呼び出し、データ利用の対価をソフト同士がやり取りするマイクロペイメントが発生する。2028年には企業向けソフトの33%がエージェント機能を備え、日常的な意思決定の最大15%をエージェントが処理するとの予測も引かれた。
こうした機械同士の取引を支える規格も動き出している。ストライプとテンポは3月にMachine Payments Protocol(MPP)を立ち上げ、Visa(ビザ)がカード決済に対応を拡張した。
コインベースが開発した「x402」は、リナックス財団に知的財産が移管され、業界標準となっている。カード網の主要各社に加え、ストライプやショッピファイ、グーグル、AWSといったWeb2の大手も参加した。
手数料構造と決済速度がカード網を上回る
カウル氏が暗号資産を必要と見る根拠は、既存の金融インフラの構造にある。クレジットカードの標準的な手数料は2〜3%に加えて約0.30ドル(約49円)の定額分がかかる。一方、AIエージェントの決済は1秒分の計算資源やデータ照会を買うために平均0.001ドル(約0.16円)を支払う。
この差は決定的だ。定額手数料が決済額の数百倍に達する構造では、既存のカード網や銀行インフラはエージェントのマイクロペイメントに使えない。
処理速度についても比較を示した。ビットコインが毎秒約7件、イーサリアムが約75件にとどまる一方、新しい高速チェーンは最高でアプトスが1万2,933件、ソラナが6,284件、BNBチェーンが3,252件を記録したという。ビザの通常時の処理能力は毎秒1,700〜1万件だ。
ただし、この比較自体が実態を見誤らせるとカウル氏は言う。ブロックチェーンはその処理能力の中で記録と決済の両方を完了させるのに対し、ビザの網が行うのは記録のみで、決済には1〜3営業日を要するためだ。
このほか、取引条件を埋め込んだ単回限りのトークンによる自動執行、暗号技術で検証可能なエージェントの固有ID、台帳への記録による監査可能性、分散型の計算資源へのアクセスを、ブロックチェーンが適する理由として挙げた。
「株式を買うように、トークンを買う」
その上でカウル氏は、投資家のポートフォリオ構成に踏み込む。現在の投資家はAI関連銘柄やデータセンター、エネルギー事業者を買うことでAIの成長を取り込もうとしているが、エージェント型AIの果実を得るには対象を広げる必要があるという。
理由として同氏が挙げるのは、需要の連鎖だ。エージェントがブロックチェーンに取引を記録するには、そのチェーンの暗号資産で支払う必要がある。ソラナに記録するならSOLがいる。取引が増えればチェーンの財源が潤い、開発者への助成が増え、エコシステムが育つという循環を描く。
「分散型のネットワークや事業が生む価値を取り込むには、投資家はそれらが発行する暗号資産やアルトコインを買う必要がある」とカウル氏は述べ、企業の価値を得るために株式を買うのと同じ関係が成り立つとの見方を示した。
なお同社は、この論考について一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の投資助言や特定の証券の売買推奨ではないとしている。議論は理論的な性質を含み、述べられた概念が実現しない可能性があるとも付記した。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=163.0円)



