タイ中央銀行(タイ銀行、BOT)のヴィタイ・ラタナコーン総裁は26日、自国通貨建ての「タイバーツ・ステーブルコイン」の発行を検討していると明らかにした。近く意見公募(パブリックコメント)を始める準備を進めており、年内には動きが見られるとの見通しを示した。バンコクで開かれたESG関連のイベントで語った。
バーツと1対1、年内に意見公募へ
総裁によると、タイ中銀はバーツ・ステーブルコインの発行について、現在研究を進めている段階にある。市場の発展に伴う取り組みと位置づけ、近く意見公募を開始する見込みだという。
設計の基本も示された。このステーブルコインは、価値がバーツと1対1で連動し、バーツが裏付け資産となる。法定通貨に価値を固定する、一般的なステーブルコインの仕組みだ。
ただし、用途はまだ固まっていない。総裁は、決済(ペイメント)の手段として使えるようにするかどうか、利用範囲をどこまで認めるかは「検討中で、研究してから判断する」と述べ、慎重に詰める姿勢を見せた。
総裁は同時に、商業銀行や金融機関に対し、デジタル資産関連の事業の一部を認める方針も示した。あわせて、カーボンクレジット(炭素排出枠)に関わる事業も解禁する考えで、環境分野の取り組みを後押しする狙いがあるとしている。
これらの発言は、ESGや持続可能な金融をテーマにしたイベントでの講演で飛び出した。総裁は、持続可能性を企業の競争力ととらえ、環境や社会への配慮が長期的な事業の生き残りに不可欠だと強調する文脈で、デジタル資産やカーボンクレジットの活用に触れた。
各国・地域では、自国通貨建てのステーブルコインや、銀行によるデジタル資産事業への参入を模索する動きが広がっている。日本でも円建てステーブルコイン「JPYC」や「JPYSC」が登場するなど、法定通貨とブロックチェーンを結ぶ取り組みが各地で進む。タイ中銀の検討は、こうした世界的な潮流のなかに位置づけられる。
もっとも、今回の発言はいずれも検討・準備段階のものだ。意見公募を経て、制度の詳細や利用範囲がどう固まるかが、今後の焦点となる。



