韓国国会の予算分析機関である国会予算政策処(NABO)は8日、ウォン建てステーブルコインの導入をめぐる制度改善策をまとめた報告書「ステーブルコインの金融市場への影響と示唆点」(経済懸案分析第109号)を公表した。
米国の「ジーニアス法」成立などを背景にウォン建てステーブルコインへの産業界・立法の関心が高まるなか、導入の是非を判断する材料として、決済コストの削減効果や金融市場への波及リスクを定量的に検証したものだ。
手数料削減は最大5.15兆ウォン
報告書の目玉は、ウォン建てステーブルコインを決済に使った場合のコスト試算だ。カード決済からの代替がどこまで進むか、決済手数料率がいくらになるか。この2つの変数を置いて計算している。
その結果、加盟店が負担する年間手数料は最小0.37兆ウォン(約407億円)、最大5.15兆ウォン(約5,665億円)削減されると推定した。
幅が大きいのは、普及の度合いによって効果が大きく変わるためだ。それでも、下限の水準ですら数百億円規模の削減が見込めるという結果は、決済インフラとしてのステーブルコインの潜在力を示している。
NABOは主要な経済懸案について客観的な分析を提供する目的で「経済懸案分析」を発行しており、今回の報告書もその一環にあたる。国内外の市場・立法動向を整理したうえで、ウォン建て導入に向けた制度的な改善案と、金融市場の安定に向けた政策的な示唆を示した。
ドル建てが98.8%、通貨主権への懸念
報告書は市場の現状も押さえている。世界のステーブルコイン時価総額は2026年7月時点で約3,123億ドルに達したが、その98.8%は米ドル建てだ。韓国国内ではまだウォン建てが存在せず、ドル建てステーブルコインが流通している。
この点をNABOは軽視していない。ドル建てステーブルコインの広がりが国内の決済体系に与えうる影響を考えれば、通貨主権を維持する観点から、段階を踏んだ制度整備を検討する必要があると指摘した。
立法の進み具合には差がある。米国が2025年7月のジーニアス法に続いて包括的な「クラリティ法案」を議論し、欧州がすでに「ミカ法(MiCA)」を施行しているのに対し、韓国は仮想資産の2段階目の立法が議論の途上にある。
金融市場への波及についても分析した。現在流通するドル建てステーブルコインと、ビットコイン(BTC)や為替、株価、金利との間で変動性がどう伝わるかを調べた結果、両者の連関性は現時点では限定的だった。ただし、国際紛争やドル高といった経済環境の変化次第では、その連関が強まる可能性があるとしている。
こうした現状認識を踏まえ、NABOは市場安定化の枠組みを、ミクロとマクロの2つの層に分けて提言している。
ミクロの層では、発行体が持つ準備資産を規制し、ステーブルコインの利用に対して付与される報酬率に上限を設けるなどの措置を挙げた。マクロの層では、市場に大きな影響を持つ「重要ステーブルコイン」をあらかじめ指定し、有事に備えた安定化措置を用意しておくべきだとした。
あわせて、デジタル技術を使った金融決済インフラを継続的に改善し、ウォン建て決済システムの競争力を国内外で高めていく必要があるとも訴えている。
日本でも、資金移動業型のJPYCに続き、2026年6月にはSBIグループが信託型の円建てステーブルコインJPYSCの提供を始めた。隣国のこうした制度設計論は、円建てステーブルコインが動き出した日本にとっても参考になる部分が少なくない。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ウォン=0.11円)


