決済大手Visa(NYSE:V)は8日、オンチェーン融資を日常的な決済に組み込む新たな取り組みを発表した。ステーブルコイン連動型のカードプログラムやフィンテック企業が、オンチェーン融資インフラとVisaのデータを使って運転資金を調達しやすくするのが狙いだ。同社のVisaNetが持つ決済データと、ブロックチェーン上の与信インフラを組み合わせる点が核心となる。
暗号資産市場の中に閉じていた融資を外へ
オンチェーン融資は、デジタル金融のなかでも急成長している分野だ。Visaのオンチェーン分析ダッシュボードによると、2020年以降、ステーブルコイン建ての融資は6,940億ドル(約106兆円)超がオンチェーンの融資プロトコルを通じて実行され、24時間365日動く世界的な信用市場を形づくってきた。
ただ、その多くは暗号資産市場の内側で完結していた。人々が日々使う実際のビジネスや決済体験を支えるところまでは、意味のある形で届いていなかった。Visaはこの隔たりを埋めようとしている。
仕組みはこうだ。Visaが持つ決済データを貸し手に提供することで、貸し手はあるプログラムがどう運営されているかを把握しやすくなる。その結果、自らのニーズに合った融資機会を見極め、資金を供給する判断が下しやすくなる。
「ステーブルコインは資金の動き方を変えているだけでなく、決済を支える金融インフラを問い直す機会を生んでいる」。Visaのグロース・プロダクツ&パートナーシップス責任者ルバイル・ビルワドカー氏はそうコメントした。
信頼できる決済データとオンチェーン技術が組み合わさることで、より透明でプログラム可能な形の流動性が引き出せるという。
先行事例クレジット・コープは累計25億ドルをデフォルトゼロで
このモデルの初期の実例が、Visaとクレジット・コープの取り組みだ。同社はスマートコントラクトを使い、資金供給・担保管理・返済を自動化して、ステーブルコイン連動カードプログラムに運転資金と決済ファイナンスを提供する。
顧客の同意を得たうえで、Visaの決済データとオンチェーンの取引記録を組み合わせ、信用パフォーマンスを評価する仕組みだ。実績は小さくない。2023年以降、累計25億ドル(約3,837億円)を超える決済ファイナンスを支え、参加するファシリティ全体でデフォルト(債務不履行)はゼロだった。
借入は3,000件超、返済は9,000件超をオンチェーンでプログラム的に処理し、透明で監査可能な記録を残しているという。
「決済企業は決済債権という優れた担保を持ちながら、その健全性をリアルタイムで貸し手に示す手段がなかった」。クレジット・コープの創業者兼CEOクリス・ウォーカー氏はそう述べた。
ステーブルコイン戦略の延長線上に
今回の発表は、Visaが進めてきたステーブルコイン戦略の延長線上にある。7月にローンチした「Visa Stablecoin Platform(VSP)」がその土台で、ステーブルコイン決済や連動カードプログラムの拡大、金融機関のデジタル資産機能へのアクセスを支えてきた。
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足元の数字も伸びている。現在、Visaのネットワーク上では160を超えるステーブルコイン連動カードプログラムが稼働し、それらの決済高は前年比で約200%増えた。
Visa自身のステーブルコイン決済高に至っては、年換算200億ドル(約3兆円)のランレートを突破。前年から15倍以上に膨らんだ。
成長期のフィンテックにとって、運転資金の確保は難しい。相応の事業規模や営業実績、手作業の審査を経なければ、従来の融資は与信が下りないことが多いからだ。
だが、信頼できる決済データに裏打ちされたブロックチェーンベースの融資インフラなら、こうした壁を透明性と効率の向上をともないながら解きほぐせる。Visaはそう見ている。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=153.47円)


