ウクライナ国家警察と保安庁(SBU)は1日、暗号資産(仮想通貨)を狙った大規模な詐欺ネットワークを摘発したと発表した。偽の投資プラットフォームを通じて欧州連合(EU)加盟国をはじめ20か国を超える市民のウォレットから資産を抜き取っていたとされる。
検事総長室の手続き指揮のもと、両機関が合同で捜査した。現時点で判明した被害者は62人にのぼる。
「テスト送金」の承認でウォレットが空に
手口は段階的に組み立てられていた。
まず人気のあるテレグラムのチャンネルに、収益性の高い暗号資産プロジェクトを装った投稿を流して標的を探す。接触した相手には、実在する暗号資産サービスを模した偽サイトへのリンクを送った。
利用者はそこで登録し、自分のウォレットを接続して資金を送る。その後、犯行グループは手作業で取引を偽装し、マイページ上に資産が増えているかのような表示を作り出した。架空の取引結果や利益の実例も見せていたという。
問題は出金しようとした時点で起きる。
出金の機能はブロックされ、代わりに「プラットフォームの動作を確認するため」としてメインのウォレットを接続し、少額のテスト送金を承認するよう求められた。
このサイトには「ドレイナー」と呼ばれる悪意あるコードが仕込まれていた。利用者が小さな送金を承認したつもりでも、実際にはウォレットへのアクセス権を渡したことになる。承認後、ドレイナーは資産を犯行グループの管理するアドレスへ自動的に移し、被害者のアカウントはブロックされた。
登録と本人確認の過程では、パスポート情報、電話番号、メールアドレス、パスワード、ログイン情報、写真も収集していた。
主犯は25歳のIT専門家、車16台を押収
SBUによると、この仕組みを組織したのはキーウ在住の25歳のIT専門家だった。同氏は首都のIT技術者たちを引き入れ、暗号資産プラットフォームの担当者を装って投資機会を持ちかけさせた。
国家警察の発表では、主犯はウクライナ人46人超を関与させ、キーウ市とキーウ州に複数の拠点を構えていた。IT技術者が偽サイトの構築と運用、遮断対策を担い、別のメンバーが拠点の管理、被害者との対話、警備を分担する組織体制だった。
SBUは、違法な活動による月間の資金の流れが「最も好調な時期」には100万ドルに達した可能性があるとしている。
捜査の過程では、オランダに設置されたサーバーが特定され、当局がデータベースへのアクセスを得た。被害者のリスト、ウォレットのアドレス、窃取された金額、メンバー間の内部連絡、偽プラットフォームの稼働記録が保存されていたという。この解析により、手口の全容と被害者の特定が進んだ。
被害者にはドイツ、ポーランド、リトアニア、ラトビア、スペイン、フランス、英国、カナダ、イスラエルなどの国籍を持つ人々が含まれる。
押収物の規模も大きい。国家警察はキーウ市と州で34回の捜索を実施し、コンピューター機器100点超、携帯電話100点超、SIMカード79枚、GSMゲートウェイ、書類、現金、自動車15台を押収した。SBUは23回の捜索で、ポルシェ、BMW、メルセデス・ベンツを含むプレミアムクラスの車16台を押収したとしている。
主犯は武装した警護を伴って移動しており、車両や不動産の一部は妻や親族の名義になっていた。
被害総額はまだ確定していない
捜査は刑法190条5項に基づいて継続中である。当局は関与者の全容、他の被害者、そして損害の総額を引き続き調べている。
SBUによれば、容疑者への被疑事実の告知について現在検討が進められている。有罪となれば、最大12年の禁錮と財産の没収が科される可能性がある。
なお、SBUが示した月間100万ドルという数字は資金の流れであり、被害総額ではない。両機関とも被害の総額は公表していない。
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