バイナンス・リサーチは7日、8月の市場動向をまとめたレポートを公開した。2026年8月の暗号資産(仮想通貨)市場は、現物ETFへの今年最大規模の資金流入を背景に、時価総額が前月比17.6%増の2.7兆ドル(約421兆円)へ上昇した。
ただし同レポートは、この上昇を暗号資産固有の材料ではなく金利環境の変化によるものと位置づけている。8月28日のジャクソンホール会議でウォーシュ氏がタカ派的な基調講演を行い、9月の織り込みの約60%が1セッションで巻き戻された。
予測市場ポリマーケットでは、8月末時点で9月の利上げ確率が約60%まで上昇した。上昇の持続性は、緩和ではなく引き締めに向かうFRB(連邦準備制度理事会)に対して、現物とETFの需要が続くかどうかにかかると同レポートは指摘する。
記録的なETF流入とビットコインの急騰
8月のビットコイン
BTC現物ETFへの純流入額は35億2,000万ドル(約5,487億円)に達し、2025年10月以来の高水準を記録した。7月の1億7,200万ドルからの大幅な増加である。
8月17日から27日まで9営業日連続で資金が流入し、年初来の赤字は52億9,000万ドルから17億7,000万ドルへ約3分の2縮小した。純資産総額は31%増加し、月間の売買回転も49%増の586億3,000万ドルとなった。
イーサリアム
ETH現物ETFも、8月28日までの週に2026年最高となる8億2,400万ドル(約1,284億円)の流入を記録している。ブラックロックのETHAが5億6,700万ドルを供給し、期間中のカテゴリー全体の約72%を占めた。
ビットコインは7日間で24.8%上昇した。2020年以降の週次リターンで上位1%に入る2.5シグマの動きである。8月25日に8万1,000ドルを突破し、27日に8万1,455ドルのピークを付けた。8万ドル超えは3か月ぶりだった。
きっかけは暗号資産固有の材料ではない。30年債利回りが5.34%に達するなか、米財務省が長期債の買い入れプログラムの上限を1セッションあたり40億ドルへ倍増した。利回りからドルへ圧力が移り、非利回り資産であるビットコインが再評価された形だ。
8月19日には利回りの急低下により、約27億ドル(約4,209億円)のショートが清算されている。
アルトコインはHYPEが50.2%高で首位
時価総額上位10銘柄の月間パフォーマンスでは、HYPE
HYPEが50.2%上昇して首位となった。7月の最下位からの反転である。
引き金は8月19日のトランプ大統領の発言だ。CFTC(米商品先物取引委員会)のマイケル・セリグ委員長がハイパーリキッドを米国内に持ち込む作業を進めていると述べ、HYPEは同日23%高の71.50ドルまで上昇した。ハイパーリキッド関連のETP3本はそれぞれ約20%、ハイパーリキッド・ストラテジーズは30%上昇している。
ただし、その後に申請も承認も行われていないと同レポートは注記する。
以下、LINK
LINKが38.8%、SOL
SOLが35.3%、RAIN
RAINが32.8%、ETHが28.0%、XRP
XRPが25.0%、BTCが20.8%、DOGE
DOGEが18.2%、BNB
BNBが15.5%と続いた。SOLは2月以来となる100ドルを回復し、ETHは1月下旬以来の2,500ドル台に乗せた。
唯一の下落銘柄はトロン(TRX
TRX)で1.7%安だった。同ネットワークは第2四半期に過去最高となる2.1兆ドルのUSDT送金を処理し、手数料も15.9%増の6億9,940万ドルとなったが、価格は上昇局面に加われなかった。
ステーキング量は457億TRXまで減り、ステーキング率も6四半期の成長を経て48.2%へ低下している。
資金はTradFiパープスから暗号資産ペアへ戻った
投資家の資金配分にも変化が表れた。
株式と暗号資産の双方を保有するバイナンスユーザーの間で、暗号資産の比率は8月23日までの週に64%から70%へ上昇し、8月30日時点で72%を維持した。
ただしこれは株式からの資金移動ではない。同じ利用者の株式保有は増え続けており、暗号資産の保有が約60%増と、それを上回るペースで伸びた結果である。原資となったのはステーブルコインで、同期間に配分が22%減少した。
デリバティブでは逆方向の動きがあった。株式や原油など伝統的金融資産に連動する無期限先物「TradFiパープス」は、1月のほぼゼロから8月初旬に無期限先物出来高の40%を占めるピークに達したが、8月30日には20%へ低下している。
出来高で見るとより明確だ。TradFiパープスの取引高は8月第1週の1,450億ドルから月半ばに930億ドルへ減少した。一方、暗号資産の無期限先物出来高は8月23日までの週に4,210億ドルへ急増している。
もっとも、週末に限れば市場は拡大を続けている。暗号資産取引所全体の週末TradFiパープス出来高は1月の約50億ドルから8月に530億ドル(約8.3兆円)へ、約12倍に増えた。バイナンスが最大のシェアを占める。
米国株式市場の通常取引時間は1週間の約19.3%にすぎないが、出来高の約89.2%を占める。取引時間の延長が進んでも週末49時間の連続した空白は残るため、24時間365日稼働する市場が需要を吸収する構図だと同レポートは指摘している。
スクイーズは消化済み、9月は指標が集中
同レポートは今後について慎重な見方を示す。
過去、今回と同等の週次上昇が起きた7回のケースでは、いずれも1か月後に価格が上昇し、うち6回は2か月後も上昇して平均18.3%の上昇となった。ただしサンプルが小さく、この基準率は方向性を示すにとどまり予測的ではないとしている。
さらに、弱気ポジションがほぼ解消されたことで、今回の上昇を主導したショートスクイーズの勢いはすでに消えたと分析する。この速度の上昇の後では、急な押し目も妥当なベースケースだという。
9月は日程が集中する。4日の米雇用統計はすでに通過し、11日にCPI(消費者物価指数)、15日にはFOMC(連邦公開市場委員会)の初日と新しいドットプロットに加え、クラリティ法案の討論終結動議の採決が控える。
8月の資金流入が利回り主導のスクイーズだったのか、それとも本格的な再参入だったのか。同レポートはこれを未解決の問いとして提示している。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=155.9円)


