島根県松江市に本店を置く山陰合同銀行と、NTTデータ、そしてデジタル証券のプラットフォームを手がけるSecuritize Japan(セキュリタイズ・ジャパン)の3社が8日、デジタル証券を使った資金調達モデルの構築に向けて本格的な検討を始めると発表した。地域企業や地方公共団体への展開を見据える。
証券口座を開かずに買える社債
検討の第一歩は、山陰合同銀行が自ら発行体になることだ。社債型セキュリティ・トークンを発行し、投資家へ直接販売する「自己募集」型のスキームを想定している。山陰合同銀行によれば、地方銀行本体による社債型セキュリティ・トークンの発行・販売が実現すれば初の事例になるという。
投資家から見た変化は、購入の入口にある。
山陰合同銀行のインターネットバンキングから申込画面へ移り、証券口座を新たに開設することなく小口・非対面で投資できる。払い込みも、利金や償還金の受け取りも、すでに持っている銀行口座を通じて完結する想定だ。証券会社を介さないぶん、購入までの手数が減る。
これを支えるのが、NTTデータの共同利用型システム「地銀共同センター」と、セキュリタイズの「Securitize PF」の連携である。勘定系とインターネットバンキングを担う前者に、デジタル証券の発行・管理を担う後者を接続する。将来的には、地銀共同センターを共同利用する他の地方銀行にも広げることをめざす。
制度の後押しもある。2026年5月27日に成立した第16次地方分権一括法により、地方債をデジタル証券方式で発行できるようになった。施行は2027年4月1日だ。現在の地方債市場は金融機関や機関投資家による購入が中心で、個人投資家の参加は限られている。
発行が決まったわけではない
ただし、現時点で確定した話は何もない。
リリースは、本件が検討開始の段階にあり、取り組みの実施も社債型セキュリティ・トークンの発行も、関係当局への確認や発行体における社内決定を踏まえて判断されると明記している。「初の事例」という記述も、リリース時点の山陰合同銀行調べという但し書きが付く。
3社はまず、発行体としての手続き、商品設計、システム設計、投資家管理、情報開示、販売実務、期中管理、利金・償還対応、法令対応まで一通りの実現可能性を検証する。そこで得た知見を、地域企業や地方公共団体へ展開する業務モデルとして整理する構えだ。


