米ビジネス・投資誌Colossus(コロッサス)は2026年4月号で、分散型取引所ハイパーリキッドの創設者ジェフリー・ヤン(Jeffrey Yan)氏に関する長編プロファイル記事を公開した。記者のドム・クック氏がシンガポールのオフィスを訪問し、ヤン氏やチームメンバーへの直接取材を通じて、これまで明らかにされていなかった創業の経緯や経営判断の内幕を詳細に報じている。
1万ドルの自己資金から始まった匿名トレーディング──「カメレオン」時代
記事によると、ヤン氏は国際物理オリンピック金メダリストで、ハーバード大学で数学と計算機科学を学んだ後、大手量子トレーディングファームのハドソン・リバー・トレーディング(HRT)に入社した。しかし8か月で退社し、予測市場プラットフォーム「Deaux」を共同創設。100人のユーザーしか集められず失敗に終わった後、プエルトリコに移り住み、自己資金わずか1万ドルでトレーディング事業「カメレオン・トレーディング」を立ち上げた。
カメレオンは年間数千%のリターンを叩き出し、暗号資産市場で最大級の匿名トレーディング事業の一つに成長。ヤン氏はテレビを画面代わりに1日14時間、週100時間以上働いていたという。
FTX崩壊が転機──「中央集権型取引所の終わりだと確信した」
2022年11月のFTX崩壊をきっかけに、ヤン氏はカメレオンの事業停止を決断。チームの一部が反対する中、自身の資金でハイパーリキッドの開発に着手した。既存のブロックチェーンでは取引所の要件を満たせないと判断し、わずか3か月で独自L1チェーンを構築。2023年2月末にローンチした。
初期の流動性確保では、カメレオン時代の戦略をオンチェーン化した「HLP(Hyperliquidity Provider)」を投入。手数料ゼロ・キャリーゼロで一般ユーザーがHFT戦略にアクセスできる仕組みを構築し、有料のマーケットメイカーに頼らずに流動性を立ち上げた。
1億ドルの資金調達を辞退──「ビットコインがVCの資金を受けていたら、ビットコインではなかった」
2024年1月、複数のVCファンドがヤン氏に接近。バリュエーション10億ドルで約1億ドルの資金調達を提案された。イリエンシンク(iliensinc)氏が2週間かけて条件交渉の準備を進めたが、ヤン氏は週末に検討した末、月曜朝に辞退を告げた。ヤン氏はColossusの取材に対し、ハイパーリキッドは企業ではなくプロトコルであり、初日からの中立性こそが核心だと説明。もしビットコイン
BTCがVCの資金を受けていたら、ビットコインの価値提案そのものが破壊されていただろうと語った。
同年11月のHYPEトークン
HYPEローンチでは、総供給量の31%を約94,000人のユーザーにエアドロップ。初値ベースで10億ドル超、最高値では160億ドルに達した。VCへの割り当てはゼロで、チームの持分(23.8%)には数年のベスティングが課された。
2025年の利益は9億ドル超──チームの経費の多くを自己資金で負担
記事で明らかになった最も注目すべき数字は、2025年の利益が9億ドル超に達したにもかかわらず、プラットフォーム収益がチームに直接配分されていない点だ。Colossusによると、利益の99%は自動的にHYPEのバイバック&バーンに充当され、流通供給量の削減を通じてトークン保有者に間接的に還元された。チームの報酬はトークン総供給量の23.8%にあたる割り当て(数年のベスティング付き)が実質的に担っている。ヤン氏はチームの経費の多くを現在も自己資金で負担しているという。
独立デプロイヤーの台頭も詳細に報じられている。HIP-3導入後、Trade[XYZ]をはじめとする7つの独立チームが数百の市場を展開。原油、金、S&P500、外国為替など暗号資産以外の資産が急速に拡大し、独立デプロイヤーが作成した市場がハイパーリキッド総取引量の半分を占めるまでに成長した。Builder codesを通じた独立開発者の累計収益は7,000万ドルを超えている。
セキュリティの現実──ボディガードなしでは移動できない
記事は冒頭で、暗号資産保有者を狙った暴力事件が世界的に急増している現状を伝えた上で、ヤン氏自身が自宅エレベーターで見知らぬ人物に尾行される事態を経験したことを明かしている。以降、移動時は2人のボディガードが同行し、チームのほぼ全員が仮名で活動。清掃員にすら事業内容を明かしておらず、オフィスに並ぶ34個のぬいぐるみから「グッズ会社」と思われているという。
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