4月18日に発生したKelp DAOのハッキング事件とそれに伴うAaveの流動性危機を受け、DeFi大手のLido Financeは20日、自社サービスへの影響と対応策を発表した。さらに23日には、Aaveの救済ファンドへの拠出提案も公開している。Lidoの基幹ステーキング機能は影響を受けていない一方、一部運用サービスで入出金が停止され対応が続いている。
迅速な資産保護へ、DAO資金による損失補填メカニズムも準備
今回の騒動は、Kelp DAOが攻撃され約2億9,200万ドル(約465億円)相当の暗号資産(仮想通貨)が流出したことが発端だ。攻撃者が不正取得したrsETHをAave等のレンディング市場で担保とし、大量の資金を借り入れたことで、DeFi市場全体に流動性危機が波及した。
Lidoの発表によると、同社の基幹プロトコルである「stETH」や「wstETH」は本件の影響を受けておらず、正常に稼働している。しかし、運用サービスLido Earnの運用プールのうち「EarnETH」は、流出資産であるrsETHを約9%(約2,160万ドル、約34億円)保有していたため影響を受けた。
この事態を受け、EarnETHは現在、預け入れと引き出しの処理を一時停止している。関係機関によって約7,000万ドル(約111億円)相当のイーサリアムがすでに回収されたものの、残る資産の回収状況や最終的な損失の割り当てに関する協議は今も進行中であり、全容の解明には時間を要する見込みである。
損失補填の仕組みと他サービスへの影響
EarnETHはレンディング市場の金利高騰による悪影響を軽減するため、レバレッジポジションの縮小など迅速な対応を進めている。仮に最終的な損失が確定した場合でも、Lido DAOの資金から300万ドル(約4.7億円)を充当する「初回損失保護メカニズム」が適用され、ユーザーの保護が図られる。
もし問題の解決が長引き、引き出し停止が継続する場合、最終手段として代替の引き出しルートが導入される可能性がある。これはユーザーが一定の元本割れを受け入れる代わりに、早期に資金を回収できる措置だ。引き出し停止前の申請分の扱いについても現在検討が進められている。
Lido DAOが2,500 stETHの救済拠出を提案──業界横断で補填の動き
Lidoは23日、EarnETHの保護とは別に、Aave DAOの救済ファンドへ最大2,500 stETH(約580万ドル)を拠出するガバナンス提案を公開した。コミュニティ投票は4月26日が期限となっている。拠出は単独の補填ではなく、rsETH不足分の全額回復を目指す複数のDeFiプレイヤーによる共同パッケージの一部として位置づけられている。
rsETH事件によるDeFi全体の不足額は10万ETH超とされ、Lidoだけでは到底カバーできない規模だ。Aave創設者のスタニ・クレチョフ氏が個人で5,000 ETHの拠出を表明したほか、EtherFi Foundationも5,000 ETHの拠出提案を行っている。Lido DAOは提案の中で「Lido DAOは複数のステークホルダーの一つとして参加するのであり、単独の引受人ではない」と明記した。
今回のAaveとLidoへの波及は、DeFiプロトコル同士の相互接続性が持つ構造的リスクを浮き彫りにした。一方で、複数のプロトコルや個人が自発的に資金を拠出し、協調的に損失を補填する動きが実際に進んでいる点は、DeFi業界のレジリエンスを示す事例ともなっている。
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