米決済大手PayPal(ペイパル、ナスダック:PYPL)は4月29日、事業構造と経営陣の戦略的再編を発表した。従来の組織を3つのコア事業部門に簡素化し、暗号資産(仮想通貨)事業をステーブルコイン「PYUSD
PYUSD」を含む独立した事業部門として位置づけた。暗号資産が「付随的なサービス」から「コアビジネスの一角」に昇格した形だ。
3部門体制へ移行──暗号資産がブレインツリーと統合
新たな3部門体制は以下の通りだ。
第1部門「チェックアウト・ソリューションズ&ペイパル」は、消費者向けと加盟店向けのエコシステムを統合する中核事業だ。フランク・ケラー氏がプレジデントとして率いる。
第2部門「コンシューマー・フィナンシャル・サービス&ベンモ」は、個人間送金アプリ「ベンモ」を軸に消費者向け金融サービスプラットフォームへの拡大を目指す。アレクシス・ソワ氏が暫定リーダーを務める。
そして第3部門「ペイメント・サービス&クリプト」が、今回の再編の核心だ。決済処理基盤ブレインツリー、中小企業向け決済処理、付加価値サービス、そして暗号資産事業(PYUSDを含む)を1つの事業部門に統合する。ジェフ・ポメロイ氏が暫定リーダーとして指揮をとる。
暗号資産を「本業」に据えた意味
ペイパルはこれまでも暗号資産の売買機能やPYUSDの発行など、デジタル資産領域に段階的に進出してきた。しかし、組織構造上は暗号資産事業が独立した事業部門として位置づけられてはおらず、決済事業の付随的なサービスにとどまっていた。
今回の再編でブレインツリーという決済インフラの中核とPYUSDを同一部門に統合したことは、暗号資産を加盟店向け決済の標準オプションとして組み込む意図を明確にしている。ブレインツリーはウーバーやエアビーアンドビーなど大手プラットフォームの決済を処理しており、ここにPYUSDが組み込まれれば、ステーブルコイン決済が大規模な加盟店ネットワークに直接到達することになる。
ペイパルのエンリケ・ロレスCEOは「成長を加速し、ポテンシャルを最大限に引き出すためには、消費者に近づき、3つの強力な事業を軸に会社を整理し、意思決定を簡素化する必要がある」と述べている。
AI変革責任者の新設など、経営陣も刷新
事業再編にあわせて経営陣の人事も発表された。アントニオ・ルチオ氏が最高マーケティング・コーポレートアフェアーズ責任者として入社し、アンシュ・バードワージ氏がAI変革・簡素化責任者に任命された。AI変革の専任ポストを設けたことは、決済処理の自動化や不正検知にAIを全面的に導入する方針を示唆している。
なお、ペイパルは5月5日に決算発表を予定しており、新体制の詳細やロードマップが公表される見込みだ。4億人超のアクティブユーザーを持つ世界最大級の決済企業が暗号資産をコア事業に据えた今回の決定は、ステーブルコイン市場の競争構図にも影響を与える可能性がある。




