実業家のイーロン・マスク氏が、チャットGPT開発企業オープンAIおよびCEOのサム・アルトマン氏らを相手取った訴訟について、米カリフォルニア州オークランドの連邦陪審団は18日、全面棄却の評決を下したことがBBCの報道により明らかとなった。
営利化の是非問われず、時効認定で本案審理は持ち越し
棄却の決め手となったのは「時効」だ。陪審団はマスク氏の提訴が出訴期限を過ぎていたと認定し、慈善信託違反や不当利得といった主張の中身には踏み込まなかった。3週間にわたる裁判に対し、陪審員の審議はわずか約2時間で決着したという。
この訴訟の発端は、オープンAIの設立理念をめぐる対立だ。マスク氏は2015年の共同設立時に3,800万ドル(執筆時換算:約60億円)を投じたが、その後アルトマン氏の下でオープンAIが営利化に方針転換したことを「理念への裏切り」として提訴に踏み切っている。
一方のオープンAI側は、マスク氏が2018年に経営の支配権を拒否されて離脱し、2023年に競合のAI企業xAIを設立した経緯を踏まえ、「競合妨害が目的だった」と反論。法廷ではアルトマン氏がマスク氏自身もかつて営利化を支持していたと証言するなど、両者の主張は真っ向から対立した。
評決後、オープンAI側の弁護士ウィリアム・サヴィット氏は「大勝利」と述べ、訴訟が「現実とはかけ離れている」と強調。法律専門家からは「事実に基づく陪審評決を控訴で覆すのは極めて困難」との見方も示されている。
マスク氏は控訴表明、「本質は審理されていない」
一方、マスク氏は評決後に公式X上で反論を展開。「裁判官と陪審員は事件の本質について判決を下したのではなく、カレンダーの技術的な問題についてのみだった」と主張し、第九巡回区控訴裁判所への控訴を表明した。
さらに「アルトマンとブロックマンが慈善団体から盗んで自分たちを富ませたことは疑いの余地がない」と従来の主張を繰り返し、「慈善団体を略奪する前例はアメリカの慈善寄付に破壊的影響を及ぼす」と訴えた。
この投稿には賛否の声が上がっており、「あなたの弁護士たちはカレンダーが読めないのか」と皮肉るコメントや「真実のために戦ってくれてありがとう」とマスク氏を支持する声が見られた。
マスク氏の控訴表明により、この法廷闘争は新たな段階に入ることとなる。AI業界を代表する2人の対立がどのような結末を迎えるのか、今後の動向にも注目が集まりそうだ。
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