金融庁は17日、日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)との意見交換会で提起した論点をまとめた資料を公表した。7月15日に開かれた会合の内容で、暗号資産(仮想通貨)交換業者が「販売所」と「取引所」のどちらへ利用者を導いているか、そのUI(ユーザーインターフェース)の導線を含めて協会と対話していく方針が明記されている。
UIの導線まで対話の対象に
金融庁は「利用者保護の強化について」という項目で、金融審議会の暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告書に触れた。同報告書には、販売所と取引所の2種類のサービスを提供する事業者において、取引所よりも収益性の高い販売所での取引を誘導しているのではないかとの懸念が指摘されている。
販売所は交換業者自身が取引の相手方となり、取引所では利用者同士が売買する。両者の収益構造は同じではない。
そのうえで金融庁は、販売所と取引所のUIにおける導線をはじめとして、今後どういった対応が顧客本位であるかなどについて、よく対話していきたいと述べた。
あわせて、金商法の下で求められる自主規制規則の整備に際しては、適切な顧客への情報提供や適合性原則の在り方についてもしっかり議論するよう協会に求めている。
アプリや取引画面のどこにどのボタンを置くかという設計が、当局の関心の対象として文書に記された形になる。
根拠は2024年施行の「最善の利益」義務
金融庁が引き合いに出したのは、2024年11月に施行された改正金融サービス提供法である。同法により、暗号資産交換業者を含むすべての金融事業者等に、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に業務を遂行する義務が導入された。
ワーキング・グループ報告書は2025年12月10日に公表されたもので、最良執行義務の趣旨を踏まえ、販売所と取引所の両方を提供する事業者について顧客へのサービス提供が適切なものとなっているか検討すべきだとしていた。
この意見交換会が開かれた7月15日は、暗号資産取引を金商法の規制対象とする改正法が成立した日にあたる。資料でも改正金商法の成立が視野に入ったことを前提に、自主規制機能の強化を加速するよう繰り返し要請している。
協会に示された4つの要請
資料の冒頭で、金融庁は協会に対して4点を要請したと記している。
| 項目 | 要請の内容 |
|---|---|
| 協会の運営 | 5名の会員理事を含む理事に求められる要素を整理し、関係者で共有する |
| 自主規制機能 | 各種委員会を早期に立ち上げ、機能させるなど強化を加速する |
| サイバーセキュリティ | JPCrypto-ISACを軸に業界の「共助」が機能するよう大手社が主導する |
| 利用者リテラシー | 金融経済教育推進機構(J-FLEC)との連携を手始めに啓発へ率先して取り組む |
協会事務局の人材については、セキュリティ監査や不公正取引の売買審査などの専門家を含めて確保を進めるよう求めた。自主規制機能の強化を担う体制が不可欠だとしている。
サイバーセキュリティでは、一部の暗号資産交換業者においてフィッシングにより顧客の会員IDやパスワードが盗まれ、不正な送金の被害が発生していると指摘。自社で発生していない場合でも他人事とせず、対応可能な対策から速やかに進めるよう促した。
金融庁はまた、金商法等の改正や申告分離課税への税制改正を経て、利用者の裾野が今後拡大すると見込まれる一方、暗号資産を用いた詐欺被害は引き続き少なくないとの認識を示した。


