米財務省外国資産管理局(OFAC)は17日、イランの暗号資産(仮想通貨)取引所BitBankを制裁対象に指定した。すでに制裁対象となっているイランの金融業者ババク・ザンジャニ氏が支配する事業体で、数億ドル(数百億円規模)相当のビットコイン(
BTC)をイスラム革命防衛隊(IRGC)へ移転させたとしている。
国内のビットバンク株式会社とは無関係
本記事で扱うBitBankは、イランに拠点を置く暗号資産取引所である。日本国内で暗号資産交換業を営むビットバンク株式会社(bitbank)とは、名称が似ているものの資本関係も事業上の関係もない。まったくの別法人である。
財務省のプレスリリースは、BitBankを「イランの暗号資産取引所」と明記し、ザンジャニ氏が2024年以降に自身のソーシャルメディアで同社のサービスを宣伝していたと説明している。
混同を避けるため、以降は「イランのBitBank」と表記する。
指定は5者、根拠は大統領令13902
今回の指定は、トランプ政権がイランとその支援者に対して展開する政府横断の経済キャンペーン「オペレーション・エコノミック・アウトキャスト」の一環である。8月24日にベッセント財務長官が「エコノミックDデイ」として発表したもので、イランのデジタル資産セクターを対象とする認定が含まれる。
根拠は大統領令13902。指定されたのは次の5者となる。
| 対象 | 位置づけ |
|---|---|
| BitBank | イランの暗号資産取引所。ザンジャニ氏が支配 |
| ピシュタズ・シモルグ電子商取引会社 | BitBankのソフトウェア開発元。制裁対象のドット・ワン傘下 |
| ホセイン・アリ・ザケル・ホセイン | ドット・ワン幹部。IRGC向けの暗号資産取引を仲介 |
| モハマド・マハディ・ザケル・ホセイン | ドット・ワンの管理職。ピシュタズ・シモルグのCEO |
| セイエド・アデル・ヘイダリ | ドット・ワン取締役会の副会長 |
財務省は資金の流れも具体的に示した。今年6月から7月にかけて、ザンジャニ氏はイランのBitBankを通じて数億ドル相当のビットコインをIRGCへ移転させたという。また6月以降、制裁対象のホルムズ・セーフ・マリン・サービス公社が、受け取った支払いをイラン政権へ送る手段として同取引所を利用していた。
ザンジャニ氏は2016年、制裁対象の国営イラン石油会社から数百万ドルを横領したとしてイランで死刑判決を受けたが、2024年に減刑された。2025年には政権系の経済プロジェクトの支援者として公に再登場し、インフラや運輸の事業と並行してデジタル資産企業のネットワークを構築したとされる。
OFACはすでに1月30日と7月24日にも、ザンジャニ氏に関連するデジタル資産事業者と仲介者を複数指定している。
ベッセント長官は「暗号資産を使ってイラン政権を資金面で支える取り組みが、OFACの手の届かないところにあるわけではないと明確に示した」と述べ、イラン政権を支援するなら制裁を科すと警告した。
日本の交換業者にも及ぶ実務
今回の指定により、対象者の米国内にある財産、または米国人が保有・管理する財産はすべて凍結され、OFACへの報告義務が生じる。対象者が直接・間接に、単独または合計で50%以上を所有する法人も自動的に凍結の対象となる。
OFACは制裁違反に対し、厳格責任の原則で民事制裁金を科すことができる。米国人以外についても、米国人に違反を引き起こさせる行為や、制裁を回避する行為は禁じられている。
国内の交換業者にとっても無関係ではない。金融庁は9月17日に公表した日本暗号資産等取引業協会との意見交換会の資料で、2026年2月のFATF声明を踏まえたイランへの対抗措置を紹介している。
そこには、暗号資産サービスプロバイダーによるイランまたはイラン所在者との暗号資産取引を含む金融取引を、リスクに応じて制限することが含まれる。
金融庁を含む関係省庁は4月13日、関係する金融機関と協会に対し、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認義務、疑わしい取引の届出義務、暗号資産の移転に係る通知義務の履行徹底を求める要請文を発出していた。


