暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースの子会社コインベース・デリバティブズは18日、米国上場株とETFを参照する無期限先物の上場承認を米商品先物取引委員会(CFTC)に申請した。
予測市場のカルシと、クラーケンを運営するペイワードも同日に同種の申請を行っており、暗号資産で普及した無期限先物を米国株に持ち込む動きが3社同時に表面化した格好となる。
代表契約はアップル株、審査は11月2日まで
コインベース・デリバティブズの届出は、CFTC規則41.23(b)に基づく「株式無期限契約」の承認申請だ。届出番号は2026-62、署名は同社最高規制責任者のジェーン・ダウニー氏で、CFTCの承認後まもなく上場する意向を示している。
代表契約として使われているのはアップル(AAPL)の個別株無期限先物である。契約サイズはアップル指数の0.01倍、差金決済で満期はなく、資金調達率の調整は1時間ごと。取引時間は米東部時間の日曜午後8時から金曜午後5時までで、いわゆる24時間5日制にあたる。清算はNodal Clearが担う。
CFTCの商品データベースには「Single Stock Perpetual Futures」として登録され、ステータスは承認待ちとなっている。審査期間は45日で、11月2日まで。新規性や複雑性が認められる場合は、規則上さらに45日の延長が可能だ。
届出書は対象銘柄を列挙していない。流動性の高い米国上場株とETFのうち、同社の上場基準を満たすものを対象とするとだけ記している。ウォール・ストリート・ジャーナルは、同社が当初50〜60銘柄を予定しており、アップル、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアが含まれると報じた。
今回のCFTCへの申請は、2段階の手続きの後半にあたる。コインベース・デリバティブズは9月1日、証券先物商品の取引のみを目的とする全国証券取引所として登録するため、SECにフォーム1-Nを提出済みだ。同日、コインベース・ファイナンシャル・マーケッツも証券先物ブローカーディーラーとしてフォームBD-Nを出している。
カルシとペイワードも同じ日に申請
同じ日に申請したのはコインベースだけではない。
カルシは、個別株とETFに連動する無期限先物およそ60本の承認を求めて申請した。対象にはテスラ、アップル、エヌビディアが含まれる。同社は5月29日、CFTCからビットコインの無期限先物について承認を得ており、これが米国で初めて規制下に置かれた暗号資産の無期限先物だった。今回は同じ仕組みを株式へ広げる動きにあたる。
ペイワードは傘下のビットノミアル取引所を通じて申請した。提供先はクラーケンの米国ユーザーで、24時間5日制を目指すとされる。同取引所はパランティアなど個別株に連動する無期限商品の準備を進めていると報じられている。
同社は17日、ハイパーリキッド上で米国向け無期限先物を展開する計画も明らかにしている。規制取引所と分散型取引所の双方から、米国市場への入り口を確保しようとしている形になる。
スワップ論争を迂回する設計
今回の申請には、法的な構造上の意味がある。
無期限先物をめぐっては、CMEグループが6月18日にCFTCと同委員長を提訴している。満期がなく、買い方と売り方の間で定期的な資金調達を伴う契約は、ドッド・フランク法上のスワップであって先物ではない、という主張だ。CFTCは9月2日に却下を申し立て、CMEの反論期限は10月2日となっている。
個別株を参照する契約は、この争点の外側に位置する。2000年商品先物近代化法が定めた証券先物商品にあたり、CFTCとSECの共同管轄下に入るためだ。カルシが5月にビットコイン無期限先物で使ったCFTC単独の自己認証ルートとは、法的な経路が異なる。
つまり3社は、訴訟で争われている枠組みを使わずに米国株の無期限先物を実現しようとしている。
法案が止まった3日後の動き
申請が集中した9月18日は、クラリティ法案が上院で審議入りに失敗した15日から3日後にあたる。立法による包括的な枠組みづくりが止まる一方で、当局への個別申請という経路に動きが集まっている。
17日にはSECがトークン化株のオンチェーン取引を条件付きで容認しており、株式と暗号資産の境界に関する判断が当局主導で相次いでいる。
コインベースはすでに米国外の対象顧客に個別株の無期限先物を提供しており、3月に開始した。米国内では、AI関連や防衛関連などテーマ別株価指数の無期限先物を扱っている。個別株はその延長線上にあるが、参照対象が公表されたバスケットではなく単一の証券になる点で規制上の扱いが変わる。
3社の申請はいずれも承認されておらず、CFTCは判断時期を示していない。


