Market View
先週の暗号資産市場は、米国の規制と金融政策という二つの材料に揺れた。9月15日、米上院では暗号資産の市場ルールを整備する「クラリティ法案」が審議入りに必要な票を得られず、前に進まなかった。翌16日には米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を引き上げた。金利が高くなると、米国債など比較的安全な資産でも高い利回りを得られるため、利息を生まないビットコインなどの暗号資産は相対的に選ばれにくくなる。この二つの逆風を受け、ビットコインは一時7万6,000ドルを下回った。
ただ、週後半には流れが変わった。米国証券取引委員会(SEC)が、一定の条件を満たすトークン化された米国株についてオンチェーン取引を認める条件付き措置を発表した。議会ではクラリティ法案が前進しなかった一方、行政側では制度整備が進んだ。ビットコインも18日に8万ドル台を回復し、現物ビットコインETFの資金フローも週後半には改善した。
今週は、FRBが今後も利上げを続けるのかが焦点になる。景気や物価が強ければ、インフレを抑えるため高い金利が続きやすく、暗号資産には逆風となる。反対に、景気やインフレの鈍化が確認されれば、追加利上げの必要性は薄れやすい。9月23日の米購買担当者景気指数(PMI)や24日の新規失業保険申請件数を確認しつつ、ビットコインが8万ドル台を維持できるかに注目したい。
Funding Watch
1. USD.AI — DeFi経由で、AIインフラ投資を可能に
USD.AIは9月15日、K3 Capitalから4,000万ドル(約62億円)の融資枠を確保した。USD.AIは、ユーザーから集めた資金を、GPUを担保としたAI事業者への融資に回すDeFiプロトコルである。ユーザーがドル連動資産「USDai」を運用プールに預けると、利回りが付くトークン「sUSDai」を受け取る。プールに集まった資金の一部は、AI向けGPUを保有・運営する事業者への融資に使われる。
AI事業者はGPUを担保に資金を借り、その対価として利息を支払う。この利息がsUSDaiを持つユーザーの利回りにつながる。融資に使われていない資金は米国債などで運用される。本記事執筆時点で預かり資産総額(TVL)は約5.8億ドル(約900億円)、累計融資額は約2.9億ドル(約450億円)に達している。
2. TINA — 運転しながら地図データを集めて稼ぐDePIN
走行中の車から道路や店舗などの位置情報を集め、地図データに活用するソラナ基盤の分散型物理インフラネットワーク(DePIN)「TINA」は、先週300万ドル(約4.7億円)の資金調達を発表した。ユーザーは日常の運転で集めた情報を提供・検証し、その貢献に応じて報酬を受け取る。
投資家には車載カメラメーカーのTHINKWAREのほか、Gemhead Capital、Archer Capitalなどが参加した。TINAはTHINKWAREと車載カメラ「TINAGeo Dashcam」の展開も進めており、実際に走る車から地図データを集めるネットワークの拡大を目指している。
すでにサービスは稼働しており、公式サイトによれば累計走行距離は130万キロ超、登録された場所は9万7,500件超、コミュニティによるデータ検証は85万4,000件超に達している。TINAトークンは9月17日にKuCoinで取引を開始した。また、THINKWAREと共同開発した専用ドライブレコーダーの予約販売も始まっており、走行データの提供とトークン報酬を結びつける計画である。
DePINでは「トークンはあるが実際の利用が乏しい」というケースも少なくない。その点、TINAはアプリ、実データ、デバイス、トークンがすでに一つの仕組みとして動き始めていることがポイントである。
3. Deadstock — 高額トレーディングカードをオンチェーンで売買
ATH Labsは9月14日、Bullish Capital主導で250万ドル(約3.9億円)のシード調達を発表した。同社が開発するDeadstockは、鑑定済みの高額トレーディングカードを保管庫で管理し、その所有権に対応するデジタル資産をブロックチェーン上で売買できるようにするサービスである。
最初の対象は最高評価の「PSA 10」を取得したポケモンカードで、現物は専門施設に保管する。1枚のカードに対して1つのデジタル資産を対応させ、その記録をアービトラム上で管理する。調達した資金はDeadstockの一般公開や、保管、価格情報、トークン化などを支える基盤の整備に使う。
国債や不動産が中心だったRWAが、コレクティブル市場まで広がっている例として分かりやすい。独自トークンへの投資というより、現物資産をブロックチェーン上で直接売買する市場そのものを作る案件として注目したい。
関連:ポケカ特化のWeb3オンラインオリパ「Deadstock」とは?特徴と使い方を解説
4. Tenka — 満期を待たずに投資を売却できるプライベートクレジット市場
Tenkaは9月17日、Maven 11主導、Gami Capitalなどが参加する200万ドル(約3億円)のプレシード調達を発表した。同プロトコルは、消費者ローンや売掛債権、設備リースなどを対象に、投資家募集から決済、二次売買までをつなぐオンチェーン市場を構築している。
従来のプライベートクレジットは、満期まで売却しにくいことが課題だった。Tenkaは、こうした信用商品を途中で別の投資家へ売買できる仕組みをオンチェーンで作ろうとしている。プラットフォームは2026年後半にローンチを予定している。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156円)


